第24話 ツンデレエルフ襲来
「熊は、まあ低階層の他のモンスター、ほとんどただの動物シリーズと一緒でその、あまりにもただの熊だから解説出来る所がほとんど無いのだけれど……。あれでかなりの速度で走るし、木登りだって上手ってところを覚えておいて」
「きのぼり……?」
「よくあるのよ、戦ってみたら思ったより強くて木の上に逃げれば大丈夫なんじゃないかって武器を捨てて木に登る探索者。大抵がそのまま木の上まで追って来た熊に殺されちゃうのよ……。というか、ここの階層から明確に死亡率が跳ね上がるから探索者としてやっていけるかどうか最初の障壁……みたいなものね」
「はえー……」
くまの階層に来る前に動画で見せてもらったけど、トレントより大きくなかったしそんなに危ないのかな?って思っちゃった。
動画の探索者さんも、一人がおっきな剣で防御して、その人に意識が向いてる間に残り3人が攻撃するってスタイルで危なげなく倒してたし。
>>熊なあ、まず怖いのよなあれ
>>ほとんどただの動物シリーズで草
>>実際、トレント以外サイズがおかしかったりはするけどただの動物だからな……
>>殺すまで殴り続けてくる以外は完全にツキノワグマだからな
>>邪神、もしかして手抜きした?
邪神>>した
>>したのかよ!……まあ、正直でよろしい。
そんな事を話しながら、第七階層への
いつものふわっとした感覚が来て、森の匂いがこい第七階層にとーちゃくした。
とーちゃくすると同時に、なんか、すごく必死な声が聞こえる。
「そこの下賤な混ざりもの!止まりなさい!」
まざりもの……
……あれ?雪花さんとつないだ手が一瞬すごく強くにぎられた。
視線をあげて雪花さんのお顔をみれば……。
怒ってる?なんでだろ?
とりあえず、声のとおりに立ち止まったレタ達に向かって走ってくるのは昨日助けたハイエルフと黒い鎧の男の人だった。
「ふ、ふふん、ここで待っていれば確実に通りかかると予測したワタクシの予想はあってましたでしょう?」
「いや、だからそもそもホテルのロビーで待ってればもっと確実だったじゃないか。なんでわざわざ早起きして四階層目から潜り直して来なきゃならなかったんだ!」
「ロ、ロビーでお礼なんてしたらものすごく目立ってしまうじゃないの!アナタ、ワタクシにそんな恥ずかしい思いをしろというの!?」
「そんなんだからパーティーメンバー増やせずに死にかけたんだろうが!」
「ぐぬぬ!……ふんっ!」
えっと?なかむつまじいことで?
「……で、何の御用ですか?」
二人に対する雪花さんの声はすごく冷たかった。かちんこちんだった。
「あ、いえ、昨日命を救われたお礼を言いたいとの事なんですが、その、彼女ちょっとその、特殊な性格でして……」
「つんでれ?」
「ツンデレじゃないわよ!」
つんでれじゃないんだー……。コメントの人達間違えた?
>>どう見てもツンデレなんだよなぁ
>>ロビーでお礼して目立ちたくないからホテルから潜り直しって努力の方向音痴がもうね
>>そっか、このダンジョン何でも便利だと思ってたけど階層戻るのだけはめんどいんか
邪神>>だって、戻るメリットがあんまりないし……。安全マージン取らずに降りちゃった場合ぐらいか戻る理由なくない?
>>特殊な素材とかって結局あんまり無いんよな、ダンジョン
>>存外、物質として未知の物質はあんまりなかったからなぁ
「あっ、その……。こほん。このカーゼンライト公爵家が十七女、レスティアラ・フェルト・ラ・カーゼンライト。貴方に命を救われたこと、心から感謝致しますわ」
ハイエルフ、レスティアラさん?は赤いドレスのスカートを持ち上げながらぐぐっと深く頭を下げた。
……なまえながくない?レタちょっと全部は覚えられない。
昨日男の人もレスティって呼んでたしレスティさんで良いと思う。
「本来ならば我が領都の城へ招いて報奨を与えるところですが、何やらダンジョン外で良からぬことを企む輩が待ち構えているとの情報もありますし、正式な御礼は後日、貴方の事情が片付いてから改めてにさせて頂きますわ」
んー、レタがやった分のお礼は別の人に親切にして返してって言ったのになぁ。
「ふっ、公爵家の令嬢を救っておいて恩を受け取らないなんてこと出来ると思いまして?お可愛いこと。……本当に可愛いのが困るのですけれど」
レスティさんがお礼を言うようすを見て、雪花さんも表情が緩んだみたい。
レスティさんはそのままレタに向かって歩み寄って顔を覗き込む。
「ベースは人間、わざわざ魔力矛盾が発生する組み合わせでの
んゆ、レタを作った人があくしゅみって事ぐらいしかわかんない……。
しばらくレタにぐぐーっとお顔を近づけてたレスティさんはふっと笑ってから離れていった。
「カイタ、今日の探索は終了に致しますわ。ついでにワタクシは一度実家に戻りますので旅装の準備をしてらっしゃい」
「急だな!?というかオレもついていく前提なのかよ!ああすまない、これで要件は済んだみたいだ。応援してるぜ、レタちゃん!じゃあな!」
「カイター、行きますわよー?遅いですわよー?」
「ああもう、すぐ行くから急かすな!」
そして、だれもいなくなった?
なんか、一方的にいっぱい喋って帰ってったし……。
すごくせわしない人達だったね?
>>いやあ、良いツンデレだった
>>……てか公爵令嬢かよツンデレハイエルフ
>>レタちゃんと雪花さん圧倒されてほけーっとしてたのに勝手に話が進んで勝手に帰っていって笑った
>>しかしこれは、レタちゃんの実家(実家ではない)がぶっ潰れること請け合い
>>クーデターとか物騒なこと言ってなかった?
>>それはそれとして、急に実家にお呼ばれする魁太君うらやましすぎひん?
邪神>>まあ、レタちゃんのアーカイブ見ながらキーキー怒ってたしこうなるとは思ってた
>>配信外のプライベートまで躊躇なくバラしていく邪神、まさに邪神
邪神>>そうだよ?
>>そうだわ、邪神だわそもそも。
「……嵐のように来て嵐のように去っていった感じね。レタちゃん、大丈夫だった?」
「えっと、なんか、胸の奥がうずってした!」
お礼なんて言われるの、初めてだったんだもん。
感謝されるのって、楽しい!
「それは、良いことをしたご褒美なの。誰かを助けた時にだけ感じられるいい気持ち。その気持がいっぱい感じられるように、チャンスがあったら人助け狙っていきましょうね?」
「はい!」
むふー。でも、お礼言われた事より雪花さんに褒められて撫でられてる今が一番嬉しい。人助けすると雪花さんが褒めてくれるなら、レタ、がんばらない理由がない。
「さて、じゃあ本来の今日の予定を熟していきましょうか。熊はそんなに大きく見えないけどあれでレタちゃんの4倍ぐらい重いから気を付けてね?重いっていうのは強いって言うことだから」
「はい!」
……でも、小さいってことはリーチが短いってことで。
尻尾で輪っかを振り回すレタには爪も牙も届かなかった。
たまに無理矢理突っ込んできて間合いの内側に飛び込んでくる熊もいたけど、レタの手足は殴れるように頑丈なお洋服に包まれてるから……。
人狼の腕力で殴りながら後退して間合いを取ればやり直し。
練習のために、輪っかを両手で扱う間合いの近い戦闘も試してみたけど。
力強く振り下ろされる爪も回転する刃にいなされるし、噛みつきには顎を殴りつけたり刃を噛ませる事で対処出来るし、苦戦はしなかった。
「普通は熊の獰猛さに怯んだりして普段の力が出し切れなくなるものなんだけど、レタちゃんにその心配は要らなかったみたいね……」
「んっ!」
だって、避けたり防いだりしたら痛くないんだよ?
痛いのが防げるって、すごく楽!
ただ、結局夕方まで狩り続けても食べられるクマは出てこなかったからレタちょっとがっかりだった。
あ、でも晩ごはんはクマカレーだったの!普通のクマのお肉なら雪花さん食べたことあったんだって。
クマ肉、ちょっと硬いけど美味しかった!
☆★☆★☆★☆
これで辺境伯と公爵家の一つがレタちゃん派につきました。
徐々に埋められていく外堀。いやもう内堀まで埋まってそう。
あ、ハイエルフの命名規則は 「名前・幼名・干支みたいなものを表す1文字・家名・領地の名前」 となっております。
ちなみに非貴族の場合は「名前・干支みたいなものの1文字・出身地」です。
(まあ、大した人数出てこないんで適当設定。皇族とかだともうちょっと長そう)
次回更新予定は9月8日21時の予定です。
どうかよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます