第5話 カロリーバー
あったかい。
そういえば、誰かに手を握られるのって初めてな気がする。ちょっと不思議な感覚。
慣れない感覚に首を傾げていると、いつの間にか涙は流れなくなっていた。
代わりに。
きゅるるるる、ってお腹が鳴った。
「ああ、お腹が空いているのだったかしら。最初からそれがわかっていればそれ相応のものを用意できたのだけれど。ごめんなさい、今はこれしか無いの」
心配そうな顔をしていたお姉さん、きりふりせっかさん?は、そう言って長方形の何かをレタに差し出してきた。
これ、なんだろう?
>>そ、それは!
>>知っているのか雷電!
>>ダン庁の売店で売っている、3個食べれば1日分のカロリーが賄えると噂の超絶激甘カロリーバー!
>>……困ったことに、アレ美味いんよな。探索しながら食ってたらついつい5~6本食ってて後で冷静になって冷汗かいたことあるわ
>>いや、それは甘党がすぎるだろう……
>>探索者の一部が糖尿病になって引退する原因でもある!
>>世知辛え!
コメントの人達の様子からすると、悪いものじゃなさそう?
手に取ってみると、それなりに重い。
食べ物みたいだし、とりあえず口に入れてみる。
……かみちぎれない。あと、端っこがトゲトゲしてていたい。
「あああ!パッケージ!そのままだと食べられないの!外装剥いて!剥いて!」
慌てたきりふりせっかさんにかろりーばー?を取り上げられたと思ったら、トゲトゲしたところから外装?が裂けて中身が出てきた。
「な、中身を食べてね?」
むぅ、ここまでされたら流石にわかる。
>>こりゃ、雪花姉さんも大変だぞ
>>おっきな赤ちゃんかな?
>>や、常識とか知識が無いだけで判断力は普通にありそうだから、一度したミスは何度もやらんじゃろ
邪神>>もぐもぐかわいい
>>邪神もよう見とる
ぱりぱりごりごりしたつぶつぶ、木の実かな?が何かで固められた食べ物……だと思う。
で、なんか、えっと、味がする。いや、違うの、凄いの。止まらないの。
「むっ、もっ、もぐ、んぐんぐんぐ……」
これが、おいしいって感覚?おいしいってすごい!実験場で流し込まれてたどろどろした奴とはぜんぜん違う!
>>めっちゃ無心で食ってる
>>泣いたカラスがもう笑ったわ
>>そして、絶対喉につまらすと飲み物を用意して待ってる雪花さん
邪神>>もぐもぐかわいい
>>お前そればっかやな
「んっ!?」
口の中が乾きすぎて飲み込めなくなった……と思った瞬間にきりふりせっかさんが飲み物を差し出してくれた。
「ごめんなさい。こちらも、貴方に飲ませることを想定してなかったからブラックコーヒーなの……」
ぶらっくこーひー?が何かわからないけど、何かを飲まないとダメなことはわかるから差し出されたボトルに口をつける。
瞬間、口の中に広がる……んー……?かろりーばーと真逆の味。
のみものって、こういう味が普通なのかな?なんか、味はともかくすごくいいにおい。
わからないけど、なんかこう、にーっ!ってなってた口の中がスッキリする感じがしする。
……おいしい、ではないけど。
>>お、ブラック普通に飲んどる
>>いや、まあ、あのカロリーバー食ったあとならコーヒーは美味いよ
>>ワイはお茶派や!濃いやつな!
邪神>>ごくごくかわいい
>>お前はいい加減正気にもどれや!
かろりーばーを食べ終えて顔を上げると、きりふりせっかさんがホッとした表情を浮かべていた。
「落ち着いた?じゃあ、申し訳ないけれど少しだけお話させてもらってもいいかしら?」
えっと、レタはごはんをごちそうになったわけで、お姉さんには誰かになにかしてもらったら必ずお礼って言われてて。
「はい!レタはごはんのおれいになんでもします!」
えっと、これでいいのかな?
なんか、コメントの勢いがものすごくなったけど、レタわかんない。
>>ん?
>>ん?
>>今何でもするって言ったよね?
邪神>>ん?今何でもするって言ったよね?
>>ぜっっっったい誰か言うと思ったら邪神もかよ!
>>つうほうしますた
>>通報先が便乗してんだよなぁ
>>まあ、雪花ねーさんは変なことせんから大丈夫やて
>>ホントでござるかぁ?
☆★☆
「なるほど、事情はわかりました。……ということで、絶対視聴してるであろう同僚の皆さん!今日はこの子を第三階層まで送り届けてから戻りますので予定の変更をお願いします。また、第一層の入場規制は解除をお願いします。……まさか、この事情を聞いた上で不法侵入者は何があっても外に引っ張り出せとか言いませんよね?」
D東風>>了解しました。
D牧>>むしろ、俺等がゲート前での確保に成功しなくてよかったまであるなこれ
D左>>規制解除了解です。あと、今後その子に必要そうな物資を用意しておきますのでホテルに届けたら一度戻ってきてくださいね
雪花さん(そう呼んでって言われた)に全部話したら、とりあえずレタはここにいても大丈夫だって事になったみたい。
ただ、ここのダンジョンは同じ階層に居られる時間が特定の階層を覗いて階層数×24時間なんだって。
時間を過ぎたら勝手に足元に
で、その特定の階層で一番近いのが第三階層、通称「ホテル」っていう場所らしい。
ちなみに、ホテル?より上の階層で下の階層に降りてから降りてきた
>>この滞在時間の仕様地味に初耳
>>なんでこんなシステムにしたんや邪神
邪神>>や、だって、
>>ゲームからシステムパクるなや!現実やぞここ!
邪神>>てへ
>>殴りたい、見えないけど殴りたいこの笑顔!
「ということで、第二階層へさっさと移動してしまいましょう。この階層はじきに新人探索者で溢れかえることになるから」
「んっ!」
レタは頷いて立ち上がった。
地面に座ってたから、お尻についた土が気持ち悪くてぱんぱんする。
一緒に払ってくれようとした雪花さんがレタのお尻を見てなんかすごい顔したけどなんだったんだろう?
>>言うて、普通はまともに戦闘できる第二階層に突っ込みたいんちゃうの新人は?
>>残念ながら、第一階層のモンスター「解体練習用うさぎ」を10匹狩って肉を納品しない限りは第二階層以降への探索許可が降りないのだ
>>あの、丁寧に皮にこの順でここにナイフを入れますって点線入ってるうさぎな。
>>生き物を殺す気概があるか、解体してパーツ取りするグロ耐性があるか、の試験だからねこれも
>>殺せない探索者は殺されるしか無いので……
>>これも探索者の死亡率を下げるための重要な試練なんや
>>あと、免許取り立て全員が同時に第一階層に突っ込むことになるので人口密度と獲物の取り合いがヤバい
>>私は混雑を避けて3日我慢しました!それでも結構混んでました!
>>なお、ここで喧嘩して相手に怪我なんてさせようものなら外に出て即免許剥奪の模様。しょうがないよね
「コメントの人はこう言ってるけど、レタはいいの?」
「レタちゃんはそもそも免許持ってないでしょう?持って無ければ違反も何も無いのよ?」
「そっかー」
そういうものなんだ!
「第二階層からはモンスターも普通にこちらを殺しに来るから、怪我をしないように私の後ろからついてきてね?」
「はい!」
返事をして、雪花さんの背中にピッタリと張り付く。
「こーらっ、それじゃ私が戦えないでしょう?」
笑いながら頭を撫でられて、引き剥がされるけどその動作が全部優しくて心地が良い。
引き剥がされた代わりに、雪花さんはレタの手を引いて歩き出した。
んー、手を繋ぐの、好き。
>>これがてぇてぇか……
>>ダン庁職員が率先して規約違反させてて草
>>いやまあ、この子は何より第三階層に連れてくことが最重要でしょうよ
>>安全だし、滞在可能時間も長いしな
邪神>>待ってるからねー
>>そうか、服のデザインは邪神任せになるのか……
>>……この子に何を着せる気だこの邪神
>>巫女服!巫女服を希望する!
みこふくってなんだろう?
「ほーら、コメントばっかり気にしてると躓くからちゃんと前を見なさい?ただでさえ裸足で危ないんだから!」
手を引いて、歩きやすい場所にレタを誘導しながら雪花さんがレタを叱る。
「あわ、気をつけるする!……でも、レタの足これぐらいじゃ怪我しない」
だって、人狼は裸足で森を駆けるものだし、もし怪我をしたって吸血鬼の血がレタの傷をすぐ再生してしまうから。
「だーめっ。ここはダンジョンの中よ?誰かが落とした刃物や装備の破片が埋まってない保障もないんだから。ダンジョン内で破傷風になったりしたら治療が大変でしょう?」
はしょうふう、がなにかわからないけど……。
叱られるほどレタが心配されてるっていう事に、心があったかくなる。
脱走できて、良かったな……。
☆★☆★☆★☆
えー……。
日間総合14位、現代ファンタジー部門に至っては3位の評価をいただきまして、誠にありがとうございます。正直ビビっております。
応援、本当にありがとうございます!
しかし、というかこれだけフォローと☆もらえて、これより上が居るのがやゔぁいですねこの業界。
それはさておき、ばんがってレタさんが幸せになれるよう執筆を続けていきますので皆さんよろしくお願いします!
えー、前作に出てきた人物に似た人物はあれです、別次元の同じ人ってだけな上に基本ちょい役なので深く考えないで大丈夫です。
次回は、「初戦闘」です。
更新予定は8月6日21時の予定です。
どうかよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます