第13章: 迷宮の中心

悠真は崩れる坑道を走った。黒曜石の壁はひび割れ、赤い光が漏れていた。頭の中では、美咲の声が響き続けた。「悠真……戻って……。」だが、彼は止まらなかった。美咲を救うため、町を救うため、儀式を終わらせなければならない。


トンネルを抜け、再び黒曜石の池の空洞にたどり着いた。血の池は静かになり、黒曜石の欠片は床に落ちていた。祭壇は、依然として赤い光を放っていた。悠真は「黒曜の秘儀」を開き、破壊の方法を確認した。短剣を祭壇の中心に突き刺す。それだけでいい。


だが、祭壇に近づくと、黒崎の声が響いた。「佐倉君、君は愚かだ。」振り返ると、黒崎が立っていた。肩の傷は血で濡れていたが、目は狂気で輝いていた。「迷宮は、私を離さない。君も、同じ運命だ。」彼の手には、新たな黒曜石の槍があった。


悠真は短剣を構え、黒崎に突進した。二人の武器がぶつかり、火花が散った。黒崎の力は異常だった。まるで、迷宮自体が彼を支えているようだった。「佐倉君、君の血で、儀式は完成する!」黒崎が槍を振り下ろし、悠真の肩を切り裂いた。血が床に滴り、祭壇が反応した。光が強まり、部屋が揺れた。


悠真は痛みをこらえ、黒崎の足を狙った。短剣が黒崎の膝を切り、彼は倒れた。悠真は祭壇に駆け寄り、短剣を振り上げた。だが、黒崎が叫んだ。「やめろ! 祭壇を壊せば、美咲は永遠に失われる!」悠真の手が止まった。「何?」

黒崎は血を吐きながら言った。「美咲の魂は、祭壇に封じられている。壊せば、彼女は消える。君は、姉を殺す気か?」悠真の心が揺れた。美咲が生きている可能性。だが、黒崎の言葉は嘘かもしれない。悠真は叫んだ。「お前の嘘には乗らない!」


短剣を祭壇に突き刺した瞬間、祭壇が爆発的な光を放った。黒崎が叫び、身体が崩れ始めた。「愚か者め! 迷宮は、君を呑む!」彼の身体は黒曜石の欠片となり、消えた。祭壇の光が収まり、部屋は静かになった。だが、悠真の頭に、美咲の声が響いた。「悠真……ありがとう……。」


突然、地面が大きく揺れ、坑道が崩れ始めた。悠真は祭壇から離れ、出口へ走った。だが、トンネルは塞がれ、道がなくなっていた。絶望が押し寄せる中、黒曜石の壁に光が浮かんだ。美咲の姿だった。「悠真……私を信じて……。」彼女の手が、壁の奥を指した。


悠真は壁に触れ、隠された通路を見つけた。通路は狭く、息苦しかったが、進むしかなかった。光が遠くに見え、出口が近いことを告げていた。だが、背後で岩が崩れる音が迫っていた。悠真は全速力で走り、出口に飛び込んだ。

外に出ると、霧崎の町が目の前に広がっていた。霧は晴れ、朝日が昇っていた。だが、町は異様な静けさに包まれていた。悠真は膝をつき、息を整えた。美咲の声が、最後に囁いた。「悠真……生きて……。」

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