第10章: 螺旋の祭壇
黒崎恭一の背後にそびえる黒曜石の祭壇は、まるで生きているかのように脈打っていた。血で描かれた螺旋模様が、懐中電灯の光を受けて不気味に輝く。佐倉悠真は、霧島玲奈と共に黒崎を睨んだ。「黒崎、儀式の目的を話せ。美咲をどうした?」悠真の声は怒りに震えていた。
黒崎は微笑み、まるで舞台の主役のように両手を広げた。「佐倉君、君はまだ理解していない。黒曜の力は、単なる支配や富のためではない。この迷宮は、時間を超える門だ。過去と未来を繋ぎ、選ばれた者を永遠にする。」彼の目は狂気を帯び、祭壇を指した。「美咲君は、その一部となった。彼女の魂は、ここに生きている。」
玲奈が銃を構えた。「黒崎、ふざけるな! 美咲を殺したのはお前だろ!」だが、黒崎は動じず、祭壇の前に立った。「殺した? 違うよ、霧島君。彼女は自ら捧げられた。君の父、浩二も同じだった。彼は黒曜の力を信じ、儀式に参加した。君が知らないだけだ。」
玲奈の顔が青ざめた。「父は……そんなわけない……。」彼女の手が震え、銃口がわずかに下がった。悠真は玲奈を支え、黒崎に詰め寄った。「証拠を見せろ! 美咲がここにいるって、どういう意味だ?」黒崎は祭壇に手を置き、囁いた。「見たいなら、儀式を始めよう。君の血が必要だ、佐倉君。」
突然、祭壇の螺旋が光り、部屋が振動した。黒曜石の壁が唸り、まるで迷宮全体が目覚めたようだった。玲奈が叫んだ。「悠真、離れて! 何か始まる!」だが、悠真は動けなかった。祭壇の光の中に、美咲の姿が浮かんだ。「悠真……逃げて……。」彼女の声は悲痛だった。
黒崎がナイフを取り出し、悠真に近づいた。
「君の血で、門が完成する。美咲と再会したければ、捧げなさい。」悠真は後ずさり、玲奈が黒崎に銃を向けた。「一歩でも動けば撃つ!」だが、黒崎は笑った。「霧島君、君にはその覚悟がない。君の父と同じで、結局は従うだけだ。」
その瞬間、玲奈が引き金を引いた。銃声が響き、黒崎の肩に血が飛び散った。彼はよろめきながらも笑い続けた。「素晴らしい! その怒りこそ、黒曜の力だ!」彼が祭壇に血を滴らすと、光がさらに強まり、部屋が揺れた。悠真は玲奈を引っ張り、祭壇の反対側に隠れた。
光が収まると、祭壇の中心に黒い渦が現れた。
まるで空間が裂けたようだった。渦の中から、美咲の声が聞こえた。「悠真……ここにいる……助けて……。」悠真は渦に近づこうとしたが、玲奈が止めた。「だめ! それは罠よ! 黒崎が仕掛けた幻かもしれない!」
黒崎は肩を押さえながら立ち上がり、渦を指した。「これは幻じゃない。迷宮の門だ。美咲の魂は、時間の狭間に閉じ込められている。君が血を捧げれば、彼女を連れ戻せる。さあ、選べ、佐倉君。」
悠真の心は揺れた。美咲を救うためなら、どんな代償でも払う覚悟だった。だが、黒崎の言葉はあまりに都合がよすぎる。玲奈が囁いた。「悠真、信じちゃダメ。黒崎は私たちを操ろうとしてる。」彼女の目は真剣だったが、悠真はまだ彼女を完全に信じきれなかった。
突然、部屋の入り口から足音が響いた。黒崎の手下が現れ、銃を構えた。「社長、逃げてください! 警察が坑道に!」黒崎は舌打ちし、渦に一瞥をくれた。「佐倉君、これは君の最後のチャンスだ。迷宮は待ってくれないよ。」彼は手下と共にトンネルへ消えた。
悠真は渦を見つめた。美咲の声が、頭の中で響き続ける。「悠真……助けて……。」
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