モモラの木の物語

@mimidake

プロローグ

春だ。


たぶん、春だ。

空から、ピンク色の花びらが、ふわふわ落ちてきてたから。


若葉の隙間から、光がおどる。

きらきら、ひらひら。

ポカポカで、ちょっとまぶしい。


ぼくは──ヒコ。

めんどくさいのが嫌いな、飽きっぽい。


今日も、木の下のすみっこで、のんびり寝てるはず、だった。


──なのに。


ドタバタ、ドタバタ。

森の中が、やけににぎやかだった。


「いっちばん大きい花びら、見つけた人の勝ちー!」

「オレが勝つに決まってんだろーっ!」

「……また始まった。」


うるさい。

うるさいけど、ちょっと、にぎやかで、好きな感じだった。


アーちゃん。

スーくん。

ミーくん。


いつもの3人組。


ぼくとは、ちがう。


──でも、まぁ、わるくない。


そんなことを思いながら、

ぼくは、花の上で、うとうとしていた。


ふわぁ……。


……あれ?

なんか、ツルに巻かれて、動けなくなってる。


めんどくさいなぁ……。

でも、べつに、動けなくてもいいか……。


そんな感じで、ぼくは、たいして気にもせず、

小さな声で、ぼそっとつぶやいた。


「……動けない……」


小さな声が出た。

寝言みたいなもんだった。


──なのに。


「なんかいるっ! あそこっ!」


「虫か!!」


「虫じゃない、服着てる!!」


ばたばたと、三人が飛び出してきた。


そして、ぼくは──

あっという間に、アーちゃんの手のひらの上に乗せられていた。


ぽふん。


あったかい。

やわらかい。


ちょっと、いいかも。


ぼんやりそんなことを思った、そのとき。


空が、ふるえた。


モモラの木。

島のまんなかに立ってる、大きな、大きな光の樹。


その光が、ほんのすこしだけ、かすれていた。


三人が、ぼくをのぞき込み顔を見合わせた。


アーちゃんが、ニカッと笑う。


歯が抜けてるけから締まらない。


「――何してたのっ⁈」


世界が、また、動きはじめた。


たぶん──

めんどくさいけど、ちょっとだけ、おもしろくなりそう。

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