第20話 緊急作戦
翌日のお昼過ぎに作戦室に入ると、ミカエルの表情が少しこわばっているのが分かった。他の二人もなんだか落ち着かない様子。何事かと思いながら、とりあえず近くの席に腰を下ろした。
「すまない。今日の作戦なんだが、急遽予定が変わった」
「といいますと?」
「今までいろいろな作戦を行ってもらっただろ? そこで得た情報と今回のカズハの件について、諜報専門の部隊に連携したんだ。そしたら衝撃の情報が飛び込んできてな」
そこでミカエルは一度、言葉を切った。ほんのわずかな間の静寂が、異様に長く感じられた。
「実は、この街全体に爆弾が仕掛けられている」
「なっ……!?」
僕は言葉を失ってしまった。今のは聞き間違いか何かだろと、そう信じたかった。
「何も言えなくなるのも無理ないだろうな。俺だって、最初聞いた時は返す言葉が見当たらなかったさ」
ため息をついてから、再び言葉を続けた。
「だが幸いなのは、今すぐ起爆させるような動きは見られないということだ。おそらく、何かあった際の最後の手段として用意しているものなんだろう」
「最後の、手段?」
首をかしげていると、レイが口を開いた。
「前に人統会の目的について聞いたでしょ? あの人たちはこの街の利権を奪い、牛耳るのが目的よ。なのにそもそも街が無くなってしまっては本末転倒。何かとち狂ったことを考えない限りは、せいぜい脅しに使用するぐらいじゃないかしら」
「なるほど」
レイの説明になんとなく合点がいった僕は目の前の水を口に含んだ。
「ま、マザーそのものに恨みがある人も少なくないから、せめてもの報いとして起爆させる、なんて可能性もないとはいえないけどね」
「アヤメの言うとおりだな」
実現してほしくない未来の話に同意を示したところで、ミカエルは咳払いをした。
「さて、今回の作戦を説明しよう。まず人統会本部の地下室に潜入し、ミツルに不正の証拠となる機密情報を抜き取ってもらいたい。その後、メインコンピュータを直接クラッキングしてもらい、爆弾が起爆できないようにしてほしい。おそらく敵のロボットが阻止しようとしてくるはずだから、レイは護衛を頼む」
今までもいろいろ作戦をこなしてきたが、今回はそのどれよりも責任が重そうだ。もし失敗したら、最悪縦浜の土地がまるごとなくなってしまう可能性だってある。そう考えると、今から既に胃が痛くなってきた。
水をもう何口か喉に流し込んだところで、どさっという音が耳に入った。机の方に目を向けると、ベストのようなものが2枚ほど視界に映り込んだ。
「これは?」
「防弾チョッキだ。敵の本拠地に行くんだから、備えは万全にしておかないとな」
「ふーん、って、なんで今まで支給しなかったんですか!? 命の危険なら今までもありましたよ!?」
「この国じゃ、防弾チョッキを手に入れるのも一苦労なんだ。今朝、ようやく手に入った新品なんだから、ありがたく身を預けろよ」
ミカエルがそう言うのなら仕方ない。事実、この国では武器や防具の類いは厳しく規制されていると学校で教わった。そう考えると、拳銃やドローンをそろえるのにもかなり苦労したんじゃないかと思う。
防弾チョッキに袖を通すと見た目よりもずっしりとした重さが肩にのしかかった。ちょっと動きづらいけど、たしかに急所はしっかり守ってくれそうだ。
その場で軽く動きを確認し、パソコンに入っているハッキングツールをチェックし終えたところで、ミカエルがパンと手を叩いた。
「準備はできたか?」
「ええ」
「はい、大丈夫です」
「……よし、そしたら早速向かおうか」
気持ち少しばかり暗い表情をするミカエルの後に続いていこうとした時、後ろから「二人とも」と声を掛けられた。
「いい? 無理はしすぎないこと。ちゃんと、生きて帰ってくるんだよ」
アヤメの真剣なまなざしを受けて、僕は何も言葉を返すことができなかった。代わりに小さく頷いた後、重い足を上げながら車庫へと向かっていった。
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