第2話

ここで主人公だったらまとめて華麗にやっつけられるんだろうが、見事俺はボコボコにされました。さすがに両サイドから殴られたりしたら避けられませんわ。そんな超常的な反射神経してないからな。俺はサンドバック如くボコボコにされていた。まぁ初音さんは逃がせたから由とするか。後は飽きるまでサンドバックになるかね。


そんなことを考えていると、パトカーの音がした。誰かが通報してくれたのか?正直助かる。もう意識も朦朧としてきたし。


「やベー警察だ。逃げるぞ向江!」


「そうだな、ちっ折角の美少女とやれるチャンスだったのに。次会ったら、半殺しじゃ済まないからな」


男達はそう捨てゼリフをはいて、路地裏のさらに奥へと逃げた。俺は膝を付いた状態から、仰向けに倒れた。


「さすがにきついわ。こんなに殴られたの始めてだわ。やっぱり武道くらいやっておいた方がいいか?それより血がかなりでていて意識が」


「九条くん!頭から血が。お願い死なないで。まだ感謝さえ伝えられてないよ」


ただの切り傷だと言おうとしたが、口が動かなかった。あ、もう意識が途切れるわ。俺はそこで意識がなくなった。


次に目を開けたときは知らない天井だった。薬品の匂いがする。つまり病院ってことか。たぶん救急車を初音さんが呼んでくれたんだろう。感謝だな。正直血を流しすぎたし。


俺は左の腕が骨折してるのを確認してから、右手でナースコールを押した。するとすぐに看護婦さんとお医者さんが来た。


「目覚めたみたいだね。輸血するくらい血を流していて、頭も打っていたから、もうちょい目覚めるのに時間がかかると思ったけど、思ったより早く目覚めたみたいだね」


だからあらゆるところに管が刺さっているのか。それに全身痛い。まぁあれだけボコボコにされればこうなることは自明の理か。


「そうみたいですね。全身痛いですけど」


「そりゃそうだよ左腕と左足は骨折。ほほも骨折してるんだからね」


思った以上に骨折したな。初音さんにはカッコ悪いところを見せたな。本当は華麗に避けて、相手を制圧した状態を見せたかったんだが。人生そんな甘くないか。


「それで全治どのくらいですかね?」


「一ヶ月と言ったところだね。それ以降も安静にすることだね」


まぁ別に運動部に入ってるわけじゃないし、問題はないだろう。野球は中学のときで終わりにしたからな。一ヶ月でなおってくれるなら、早い方だろう。


「分かりました。ゆっくりと入院生活を楽しみます」


「そうしてくれるなら安心だよ。それじゃ僕は次の患者さんなところに行くね。また何かあったら呼んでね」


そう言って、お医者さんと看護婦さんは去っていた。


「さて全身痛いから、動きたくないし。本でも読んでいるか」


俺は右手で鞄を開けて、ラノベを読み始める。利き手が骨折してなくて良かったわ。なにかをするのにそこまで不便ではない。それから一時間ほど本を読んでいると、ドアがノックされた。


「どうぞー」


すると初音さんが目に涙を浮かべながら、俺に抱きついてきた。嬉しいが、骨折してるから、めちゃくちゃ痛い。痛すぎてもっと折れそうだ。


「初音さんは痛いから、取り合えず離してくれ」


「あ、つい目覚めて嬉しくて抱きついちゃったよ。ごめんね?」


「いや大丈夫だ。警察と救急車呼んでくれてありがとな。あのままぼこぼこにされたら、俺は何かしらの障害をかかえることになっていたかもしれない」


「九条くんを置いて、逃げたりはしないよ」


「そうか、それとカッコ悪いところ見せたな。本当はもっと華麗に片付けるはずだったんだが」


「全然カッコ悪くなんてないよ。むしろボロボロになっても守り抜く姿はカッコよかったよ。今まであったどんなイケメンよりもね」


好きな人にそこまで言われるのは嬉しい限りだ。やっぱり初音さんを好きになってよかった。ちゃんと俺を見てくれる。まぁ好きになってくれるかは別問題だが。


「そうか、それは嬉しいな」


初音さんは俺から離れると、とびきりの笑顔を見せてきた。


「生きててありがと!」


俺はその笑顔にキュンと来た。これこそ天使の笑み。きっと俺はこの笑顔を見るために生まれてきたんだろう。またキュンとしすぎて気絶しそうだ。なんとか気絶しそうなのを持ちこたえて、初音さんに笑顔を返した。


好きにはなってもらえないかもしれない。でもこうやってカッコいいとか誉めてもらえるだけで満足だ。いつか初音さんが好きな人ができたとかに一緒に喜べるようにしよう。


初音さんは用事があるらしくすぐに帰った。どうやら一ヶ月間留学しに行くみたいだ。フランスにらしい。きっとフランスでもモテモテなんだろうな。行く直前なのに俺が目覚めたから、すぐに病院に来たらしい。そこまで思われていて俺は嬉しいわ。


「それじゃあまた七月ね」


「ああ、また学校でな」


それから一ヶ月俺はリハビリを頑張りながら、病院で過ごしていた。もちろん武道の動画も見ながら、トレーニングも積んでいた。次はぼこぼこにされないようにな。


もちろん入院してる間親も来てくれた。だからそんなに入院しても寂しくはなかった。それから退院をして、病院で見た武術の師範がやっている道場に入りたいなと思っていた。








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