第9話 支配魔法

支配魔法


 『……ッ!早く魔力を練らないと!!』


 シルヴィが地上に上がったあと俺は海ゴブリンの足止めをしていた。武器は何度か試したが海ゴブリンの速さについていけるはずもなく諦めた。今は魔法を使うために少しでも魔力を練り上げなくては……。

『頼むから上手くいってくれよ!!』


 俺は練り上げた魔力を海に流し、自身の周囲一メートルの水を支配した。あとは支配した水に命令を与えるだけだがこれが難しい。命令には明確なイメージが必要で少しでもイメージが崩れると失敗に終わってしまう。


 俺は使いなれた剣をイメージし命令を与えた。魔力を込められた水はみるみると形を変え三本の剣になった。

 『これなら!!』


 普通の剣ならば水の抵抗があり水中で振り回すことは難しいだろうが、魔力でできた剣ならば話は別だ、俺の意思に従い自由に動いてくれる。俺は水でできた剣を体の周囲に漂わせた。

 『ここだ!』


 俺は海ゴブリンの攻撃を待ち魔力の剣に命令をして振り下ろした。剣は見事に海ゴブリンの体を捉え斬り裂いた。残りの海ゴブリンは仲間を俺が殺すのを見て海蝕洞の入口の方向へ逃げていった。

 『そろそろ息が限界だ足場に戻らなきゃ。』


 俺が足場に戻ろうと浮上していると水面からシルヴィがこちらに向かって泳いできていた。

「面倒になる前に私は帰るわね、明日のお昼に初めて会った場所で待ってるわ」


 水中で喋ることのできない俺はシルヴィにお礼の一言も言えないまま足場にあがった。

「コナー!大丈夫か!早く回復してやってくれ!」


 足場に上がると父さんがすぐに駆け寄り俺を回復するように仲間に頼んだ。

「だい…じょうぶ、大した傷じゃないよ。それより溺れてた彼は無事だった?」


「あぁ、お前とジョゼフさんとそれからあのマーメイドのおかけでな!よくやったぞコナー!」


 父さんが俺を頭を撫でながら褒めていると、溺れていた人が俺の前に立った。

「あの!助けて頂きありがとうございました!飛び移ろうと思ってはいたんですが。海が怖くて足がすくんでしまい……」


「いえ、あなたを助けたのは俺じゃなくてシルヴィなので、お礼ならいつか彼女に言ってあげてください。」


「シルヴィ……それってあのマーメイドの名前ですか!彼女はどこに!」


「面倒になる前に帰るって言って行っちゃいました。」


「そうですか……」


 彼もそうだが父さんもシルヴィがいなくなったことに複雑な顔をしている。きっと昔のことで思うところがあるのだろう。俺の呼吸が少し落ち着いたところで俺たちは再びボートに乗り来た道を引き返した。

「おい、なんだあれ?」


 父さんの指をさす方を見ると、水面に海ゴブリンの姿が五匹ほど見えた。海ゴブリンたちはこちらに向かい物凄い勢いで向かってきた。

「全員しっかりボートに捕まれ!」


 俺たちが必死にボートに掴まっていると海ゴブリンたちは水面をすごいスピードで移動してボートに体当たりをしてきた、ボートも魔力で強化されているため壊れはしないがすごい揺れだ。それにしても海ゴブリンの体の大きさにしては揺れが大きいすぎる。俺は疑問に思い海の中を覗いてみた。


 そこには赤黒い体に見覚えのある特徴的な背びれを持つ生き物にゴブリン達が跨っていた。

「みんな!ゴブリンが魔物に乗っています!肉食の魔物です!絶対に海に落ちないよう気をつけて!」


 魔法使いは魔力を練ろうとするがボートの揺れとゴブリンの攻撃で集中できず上手く魔力が練れず、残りの俺や他の剣士たちも慣れない足場と突然海から飛び跳ねてくるサメとゴブリンに上手く対応ができず苦戦を強いられていた。


「地上じゃ無敵の冒険者も海の上じゃそんなもんか!俺が片付けてやるから身を低くして隠れてな!」


 俺たちが防戦一方になっているなかジョゼフさんだけは襲いかかるサメとゴブリンを相手に上手く戦うことができていた。

「ふざけるな!息子の前でそんな情けない姿見せられるか!」


 そう言いながら勢いよく振った父さんの剣はサメとゴブリンを一撃で一刀両断にした。

「やるじゃねぇか!」


 先程までは海に落ちるのを怖がっていた父さんだったが、ジョゼフさんの言葉で顔つきが変わった。父さんはボートからボートへと飛び移り仲間を守るように襲いかかるゴブリン達を斬り裂いた。


 数が減ったからかゴブリンたちの攻撃がピタリと止まり俺たちは何とか生き延びることができた。その後ギルドへ海ゴブリンがサメに乗っていたことや討伐の報告をして。翌日シルヴィとの約束の時間海へ向かった。

 

 

 


 

 

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