4話 歪んだ静寂
乾いた風が、異形の消えた跡地を吹き抜ける。
鼻を刺す、鉄錆びたような匂いが、空気に滲んでいた。
セリオスたちは、無言でその場を見渡す。
異形たちが暴れた形跡はない。
争った痕跡もない。
ただ、そこには――異様な「空白」があった。
地面の一部が、奇妙に沈み、砕けたようになっている。
周囲には、微かに血の気配も漂っていた。
ミレアが、周囲を見渡しながら低く呟く。
「……何が起きたのかしら?」
ライゼは沈黙したまま、風の流れを読む。
空間そのものが、どこか歪んでいる。
シュリオが地面の砂を拾い、指先でこする。
セリオスも膝をつき、手のひらで地面をなぞった。
ざらつき、砕けるような感触。
焼けたわけではない――だが、確かに異常だった。
セリオスが静かに言葉を落とす。
「……火じゃない。熱でも、炎でも、こんな崩れ方はしない」
ライゼがわずかに顔を上げ、風の匂いを確かめる。
この場に満ちているのは、自然のものではない。
何者かが、この地に異常な力を及ぼした。
「普通の人間に、こんな真似はできない」
セリオスが、確信を込めて言う。
ミレアも短く頷いた。
「……だが、事実、何かが起きたわ」
セリオスは静かに立ち上がった。
この先に、まだ何かがある。
敵は、異形だけではない――
そんな確信が、胸の奥で静かに灯った。
「追うぞ」
セリオスの一言に、三人が無言で応じる。
乾いた空気を蹴って、四つの影が崩壊域の向こうへと進み出す。
彼らの背に、血の気配を孕んだ鉄錆びた風が、静かに流れていった。
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