2話 新たな火種

支部の簡易作戦室に、小隊編成メンバーが集まった。


テーブルを挟み、顔を合わせる四人。


ライゼ・ファルク。

風属性の探索者。無口で表情は読みにくいが、実力は確か。


ミレア・クラウス。

氷属性の守護者。落ち着いた物腰と、鋭い眼光を併せ持つ。


シュリオ・ヴェイン。

雷属性の癒し手。金髪のくせっ毛を揺らしながら、場の空気を和らげようと軽く笑っていた。


そして、セリオス・アーヴェン。

火属性の境界守。静かな闘志を胸に秘めた男。


初対面に近い者もいたが、互いに敵ではないと知るには十分だった。


支部長が地図を広げる。


「近隣で、異形の出現が増加している。通常の進行速度ではない。何かがおかしい」


指で示された地点は、以前とは違う、小さな崩壊域周辺。


「目的は、異形の排除と、異常事態の調査だ。

この周辺で、不可解な現象が報告されている」


不可解な現象――

それは、異形たちが一時的に姿を消す「間(ま)」の発生だった。


普通、異形は絶え間なく活動する。

それが急に消えたとすれば、何らかの人為的介入があった可能性がある。


「気をつけろ。通常とは違う、“何か”が動いている」


支部長の声が低く落ちた。


セリオスは、背に負った剣に軽く手を添えた。


これまでとは、違う戦いが始まる――

そんな予感が、確かにあった。

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