禁書庫 7
禁書庫の内部はさっきの部屋とは違い灯りがついていた。ただ光源としては弱く、周囲を薄明かるく照らす程度でどうにか本を読めるくらいの明るさだ。
「やっぱりここも書庫何だな」
並ぶ書架を見てヒロトくんがそう言った。
「ここの本にはあまり触れない方がいいかも。ここは禁書庫何て呼ぶくらいだからろくな本があるとは思えないからね」
「うむ、確かに本からもわずかに嫌な気配を感じるのである」
注意した手前手に取ったりはしないど正直気になりはする。まさか全部雰囲気作りの飾りというわけでもないはず。
おっといけない。これ以上考えていたら本当に手が伸びでしまいそうだ。
「ミトラさん、足取りに迷いがないけどどこに向かえばいいかわかっているの?」
そう問いかけるとピタリと足を止めて振り返った。
「気配が濃い方へ向かってはおるが、正直わからぬな。空間そのものが怪異によって生まれておるゆえ全体が怪異の気配に満ちておる」
「……つまりは私たちは迷子ってこと?」
「うむ。引き返して元の場所に戻れる保証はできぬ状況ではあるな」
焦った様子もなく変わらぬ調子でミトラさんはそう返してきた。どうしてこんな状況で平静としていられるの! というかもっと早く言ってほしかったんだけど!
マイペースなミトラさんに内心頭を抱えながら後ろのヒロトくんの方を振り返る。
「大丈夫だよ、先生。ミトラさん、禁書庫を統べる親玉はどこにいる?」
ヒロトくんは私を安心させるように笑うと私の肩越しにミトラさんへとそう問いかけた。
それはわからないという話なんだけど。ヒロトくんの質問の意図が正直わからなかったのだが……
「うむ、禁書庫の際奥にいるようであるな」
「え? さっきはわからないって言ったのにどうして?」
「第六感であるな」
意味のわからない解答に混乱している私の肩にヒロトくんの手が置かれた。
「彼女の特殊能力だと思って。だから彼女に何か具体的に聞かないようにしてくれ。僕が聞くので」
その目は真摯で適当なことを言っている感じではなかった。どうしてダメなのかは全くわからなかったけど言われた通りにしようと思った。
「ミトラさん、案内して!」
「うむ、任せておれ」
ミトラさんはそう答えて再び歩きだす。先程より足取りは確かでこうしてみるとさっきまで探り探りだったんだなとわかる。それにしても歩くの速すぎない?
私は置いてかれないようにどうにかミトラさんの後を追いかける。
すると急にミトラさんが足を止めたので危うくぶつかりそうになった。
「いったいどういう――」
文句をいいかけた私の目に不自然な現象が目に入る。奥の照明が消えてる?
よくよく見てみるとそれは現在進行形で進んでいてその現象はこちらに近づいて来てるような……
「2人とも何か来るのだ!」
それを聞いたヒロトくんの行動は速かった。彼は私の手を掴むとそれの進行方向から外れる形で走り出す。
私は転ばぬように一生懸命足を動かす。気付かれていなければこれで回避できるけど。
「ダメであるな。こっちを認識して追って来ているのである!」
私は振り返りたい気持ちになったが転びそうだと思ってやめておいた。
「いつまで逃げればいいの!?」
「振りきるまでといいと言いたいところだけどそれは無理そうだ。この状況にあった噂は何かなかったか!?」
インドア派の私には走り続けることは中々の地獄であったがどうにか脳に酸素を送って記憶を探る。
「えっと確か電灯が消えたと思ったら書庫に迷い混んでいた話はあるけどここって元々書庫でしょ!」
「禁書庫の別の場所に飛ばされるかも知れぬな。よし、私が飛ばされよう。そうすれば止まるかもしれぬ」
「いや、そんな確証もないしそんな危ないこと――」
させられるわけないじゃん、そう続ける前にミトラさんが踵を返して来た道を戻り始めた。
どうなったか気になったが振り返るわけにもいかず足を動かす。
それでも私たちは逃れることはできなかった。
「先生!」
ふ、と周囲が暗闇に包まれ、目を開けているのか閉じているのかもわからなくなる。その時誰かに抱きしめられた気がしたがそれが夢か現実かわからぬまま私はそのまま意識を失ってしまった。
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