第11話
第11章:進化の果て、神と人との断絶(だんぜつ)
---
ゼノ・グラディウス。
それは“神に成り損ねた存在”。
進化の裏側で生まれた、退化の化身だった。
その姿は、人の面影を残さぬ漆黒の巨影。
うねる無数の腕、無機質な目、腐蝕する空間。
その一歩が、大地を腐らせ、命の色を奪ってゆく。
---
「こいつが……退化の……」
セリカが膝をつき、苦しみながら呟いた。
ゼノの放つ負の波動は、進化の力を持つ者に強く影響を与える。
レイの身体も蝕まれていた。
だが、彼は目を逸らさなかった。
「こいつを……止める。
俺たちの進化が、希望であるために!」
---
アステルも立ち上がる。
教団の信仰が偽りだったことを知っても、彼の信念は崩れない。
「ならば、この命……償いとして共に戦わせてくれ」
奇妙な共闘が始まった。
レイ、セリカ、アステル──そして、目覚めた《神の遺産》が一つに集う。
---
ゼノはかつて、《最初の進化者》に取り込まれた“退化因子”が自我を持って生まれた存在。
進化の失敗、神の誤算。
その“副産物”が、今や世界を飲み込もうとしていた。
---
戦いは、時空をも歪めた。
大気が弾け、空が裂け、廃都は変異する。
だが、レイは**“内なる進化”**を発現させていた。
それはもう、“力”ではなく“意志”そのもの。
「俺たちは、前に進む。進化の力は、人を越えるためじゃない。
人であり続けるための、意志だ!!」
---
彼の身体が光り輝く。
神の力でも、教団の術でもない。
人の可能性(ちから)だけで成し遂げる進化。
レイの手が、ゼノの核へと届く。
そして──
---
**“記憶の継承”**が始まった。
ゼノの中にある、世界の裏側の記憶。
失われた神々の歴史、滅びた進化都市、消えた叡智。
レイはそれらをすべて受け止め、飲み込み、叫ぶ。
「俺たちは、終わらせない! まだ……未来がある!!」
---
ゼノが咆哮をあげ、最後の暴走を始める。
退化の波動が、世界全土へと拡散しようとしたその時──
レイの《進化核(しんかかく)》が、ゼノを包み込む。
光と闇が交わり、“中和”が始まった。
---
ゼノの叫びは、まるで“神になりたかった子供”のようだった。
レイは静かに目を閉じる。
「わかったよ……。
お前もまた、進化を……“望んでいた”んだな」
---
そして、ゼノは光のなかに消えた。
---
戦いは終わった。
だが、物語はまだ終わらない。
---
アステルは、教団の象徴だった仮面を外し、ひとり廃都に跪いた。
「我々は……何を、信じていたのだろうな」
セリカは、空を見上げて微笑む。
「でも、選べる。これからは、自分の意志で」
---
レイは、空を見上げながら小さく呟いた。
「次が、最後だな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます