第十章 君はまだ“転生”していない──なのに何その輝き
「……なあ、最近のミナト、妙にキラキラしてない?」
「してる。オーラ的に、下手な合格者より“異世界主人公感”出してる」
「……まさか、あれが“前世で輝く”ってやつ……?」
異世界転生管理局、面接班──今日も平常運転でカフェラテ飲んでる矢上ヤガミと、その横で仕事してるしのぶが、真顔で議論していた。
ヤガミはPCモニター越しに、休憩スペースで“転生希望者向けサロン”の座長を務める男を睨む。
「なんであいつ、面接不合格者なのにあんなに活躍してんだよ」
「しかも最近、“仮想異世界での過ごし方のコツ”をパワポにまとめて講義してるらしいです」
「局内講座開いてんの!? なにその講義!?」
ミナトの周囲では彼に影響を受けたものが少なからずいた。
局内若手職員:「……あの、ミナトさんに履歴書の見せ方についてアドバイスもらって……転職希望先の一次審査通過できました……!」
転生希望者の青年:「ミナトさんみたいに生きたいッス! もう一花咲かせたいッス!」
技術課スタッフ:「仮想空間の滞在時間、局員より多いんですけど……局のAIがあいつに懐いてるんですけど……」
「……まって、これもう転生しなくても成功してるじゃん」
「“前世で主人公”というバグが今ここに……!」
その日の午後、誰もいない仮想空間の草原にミナトは一人、寝転んで空を見上げていた。
風がやけに心地いい。
作りものだとわかっていても、こういう青空って、じんわり胸にしみる。
……思えば、今すっげえ楽しいな。
面接官たちは俺の扱いに困ってるみたいだけど、なんだかんだ誰かと関われてるし。
誰かが俺を見て笑ったり、呆れたり、怒ったり。
それだけで、こんなに満たされるなんて。
「でも……」
彼はぽつりと呟く。
俺、なんで転生したかったんだっけ?
異世界、行きたい気持ちは本当だ。だって、あっちなら……もっと強くなれるし、俺TUEEEできるかもしれないし。
でもそれって……なんか違う気もしてきた。
モテたい?
無双したい?
スキルガチャ引いてチート能力もらって、無双して、城もらって、ハーレム作って──
……うん、そりゃ憧れるけどさ。
本当は、たぶん……
誰からもちゃんと見られてないって思ってたんだよな。
現世では期待されたことも、頼られたことも、何かを任されたことも、ほとんどなかった。
俺って、誰の代わりでもない“俺自身”として、生きてる感じ、したかったんじゃないかな。
ただそれだけだったのに、いつのまにか「異世界に行けばなんとかなる」って思いこんでたのかもしれないな。
でも──
ここにいても、そんな風に感じる瞬間があるなら……
俺、本当に転生しないとダメなんだろうか?
その頃──局長室
「仮想空間に“教育プログラム”を実装して、彼に実地演習をしてもらうのはどうか、という打診がアメリア王国から届いてます」
「教育って何の?」
「“王族との外交訓練”と“政治交渉の初期対応”……らしいです」
「それ、ほぼ現地入りじゃねぇか!!」
局長が机を叩く横で、しのぶがこっそりヤガミに耳打ちする。
「どうやら“正式な転生への道筋を探っている”ようです……このまま行けば、ミナトさんが“合法的に”異世界入りするのも時間の問題かと」
ヤガミはこめかみを押さえ、呻く。
「くっ……胃薬、追加で……!」
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