第六章 奇妙な注目
「……その者が“ミナト”か」
アメリア王国・異界調査院の研究塔、深部。
魔導式の水晶球が、面接室で大声を張り上げるミナトの姿を映していた。
「はい。例の“何度落ちても諦めずに面接を受けている魂”です」
報告するのは、先日使者として転生管理局に出向いた副官。
「これは……面白いな」
研究塔の主、老魔導士ヴァルフレアは顎髭を撫でて微笑んだ。
「能力は?」
隣にいた武官が問う。
「皆無。少なくとも今のところ。発現した兆候もなければ、潜在的な魔力も皆無」
「じゃあ、なぜ関心を?」
「“普通すぎること”が異常だからだ」
ヴァルフレアは指先で水晶球をはじいた。
映像の中で、ミナトがガムをクチャクチャ噛みながら「今世こそ無双するッスよ~」と言っている。
「こんな魂が、なぜか我々の水晶球に何度も引っかかる。因果観測の誤差のような微細な揺らぎが、彼を中心にして毎回発生している」
「……つまり、何かあると?」
「何かある」
水晶球の中、ミナトがくしゃみをした。
「……誰か俺の噂してます?」
「本当に何かあるんじゃないか?」
武官が若干本気のトーンでつぶやいた。
「引き続き監視を続けよう。必要とあらば……“計画的転生”をこちらから仕掛けてもいい」
「えっ、あのバカに異世界送りを!?」
「“バカだからこそ何かがある”という場合もある。神々が用意した“想定外”が紛れ込んでいるのかもしれん。とりあえず直接観察してみることにしよう。」
一同が静まり返る。
映像の中、ミナトが書類の職歴欄に「現世:人生経験豊富、異世界:未経験」と堂々と記入していた。
一方、現世・異世界転生管理局 面接室。
「次の方、どうぞ」
ガチャ――
「どうも〜、今日も来ちゃいました、運命のルーレット回しに!」
「ミナト、お前もうルーレット壊れてるよ」
ヤガミが無表情で言った。
「何回やっても当たりが出ないからこそ、最後に超絶レアが出る可能性が――」
バンッ!
突如、ドアが乱暴に開かれる。立っていたのは異世界側の高官らしきローブ姿の人物。
「彼だな。ミナト・ヒロユキ。少し、お話を――」
「え、スカウト!?ついに異世界スカウト!?やった!俺、チート来た!?」
「いや、そういうのではなく……“観察対象”として」
「観察ッ!?俺、学校のモルモット枠!?」
「ちなみにその学校、世界規模ですね」
しのぶが冷静に補足。
「あー。すいません、ちょっと今面接中でして、後にしてもらえませんかね?」
「この間面接にも口出しすると宣言したばかりであろう。またリョウタのようなものを転生させられても困るのでな。」
この話を出されるとヤガミも閉口せざるを得ない。
「いやいや、待って待って。面接すら通ってないのに異世界から注目されてるのって、俺くらいじゃないですか?」
ヤガミが苦い顔でつぶやく。
「……それが腹立つんだよな」
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