第三章 「テンプレ転生者 VS 現実担当官」

異世界転生管理局には、正式な“異世界外交課”という部門が存在する。

そこでは、複数の異世界と結ばれた協定に基づき、転生者の受け入れと影響管理を行っている。


その中でも、とりわけ交渉が難航するのが――

アメリア王国代表外交使節団とのやりとりだ。


「また来てるんですか……?」


俺は資料をめくりながら、ため息をついた。


「来てる。“転生による文明干渉に対する抗議”で。これ、今月で3回目な」


「神速のリョウタですか?」


「神速のリョウタです」


端末に表示されたのは、アメリア王国から届いた電文の写しだった。


《リョウタ=カミハヤ。貴局より転生。

一ヶ月で国家トップ、二ヶ月で魔王撃破、三ヶ月で“俺ユニバース”設立。

現地の文化・宗教・法体系を破壊し、現在“俺教”が国教となっております。

賠償と引き渡しを求めます》


「……俺、許可出してねえからな。リョウタの面接担当、上田だぞ」


「上田またかよ。顔採用、マジでやめてほしい」


そのとき、廊下からバタバタと足音が近づいてくる。

扉が開き、異世界外交課の佐々木が駆け込んできた。


「来ました! 使節団、正門に到着!」


「またか……。まさか、直接“クレームの嵐”を浴びる羽目になるとはな」


「今回は代表として、“アメリア王国 第七王女・ルーファ”が来訪です。かなり、お怒りで……」


「王族来たの!? こっちはただの官僚組織なんだけど!?」


しのぶが冷静に補足する。


「とはいえ、我々は異世界との“魂条約”に基づいて、転生による文明干渉リスクを最小限に抑える責務がありますから」


「条約の前文が“テンプレを超えない範囲で”って、すでに意味不明なんだよな」


そのとき、別の端末がピコンと鳴った。


『第四ブースに霧島ミナト様がお待ちです。』


「忘れてた、こっちも相手しなきゃ」


「第五回、ですね」


ミナトは今日も元気にやって来た。笑顔だけは満点。


「よっす! 今日こそハーレム目指して異世界行っちゃうぜ!」


「……タイミング考えろ」


「えっ、なんかあった?」


「“お前がまだ行ってない”ことだけが、異世界にとって唯一の救いかもしれない」


ミナトはキョトンとした顔で席に着く。


「でも僕のプラン、今回はマジでイケてますよ?

前回の“俺だけ無双世界”は捨てて、今回は“恋愛スローライフ型”!

まずは田舎の村で野菜を育てながら、通い妻的ヒロインと心通わせていくんですよ!」


「はい落第。お前の面接、タイムライン的に今、一番ピリついてるから」


「えええ!? なんでよ!」


そのとき、通信機が再び鳴った。


《アメリア王国使節団より要望:可能であれば、“未転生者”の面接風景も視察したいとのこと》


「ミナト、お前……見学対象になったぞ」


「うそでしょ!? 俺、まだ何もしてないよ!?」


「してないけど、“これから何かしそうな顔”してんだよ」


「顔って……面接関係なくない!?」


こうして、第五次面接はなぜか“国際監視下”で行われる運びとなった。

ミナトは知らない――彼の“ただの妄想”が、異世界にまで波紋を広げつつあることを。


「しのぶ、これ俺の担当じゃなかったら、面白がって読んでると思う」


「ですね。読む分には最高です。現実は地獄ですが」


 

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