世界はなべてことも無し

まとい。

第1話 下げ渡し

 とある王国の王都にある学園平民から貴族迄、皆が通っている学園だ。身分によって、就学時間帯が変わってくる。貴族なら午前中朝からお昼までで昼食後終了。平民は朝と昼の中間から、夕方までとなっている。

 貴族は学習内容は、貴族として全員が知るべき内容を学ぶ。午後は各自でお稽古などを行って過ごす形だ。

 平民は、読み書き計算を午前中に、午後は知っておくと有利に働く法律の勉強だ。王都の学園だから王都の民だけだろうと思うが、各貴族家でどれだけ裕福なのかの誇示も兼ねて、自領の平民を入学させることもできる。

 この場合は、入学させた貴族が費用等を負担する形となる。

 そのため、平民の生徒はみな真面目だ。領主に恥をかかせない為にも必死に学ぶことになる。とはいえ、これもまた真っ当な領主であればなのだが。


 そんな学園の食堂で、事は起こった。

 ガシャンという音と悲鳴。そして、顔を真っ青にしているかと思ってたら、真っ赤にして怒り始めた被害者の令嬢。


「あんたら、なんしたかわかってるんか」


 おっと、令嬢らしからぬ言葉が。


「は、たかが男爵令嬢が何言ってやがる、だというのにこんなに料理を広げて、大貴族様か何かか」


 そう言ったのは、素行があまりよろしくないと、指導課から聞いている伯爵令息でした。

 あ、私ですか、現場を見ている公爵令嬢ですが、男爵家の彼女の領地は農業で有名で、領民が沢山この学園に来ているんですよね

 そうですね、平民の昼食は、貴族の食後に、下げ渡しという形で行われます。

 なので、自領の平民の為に沢山料理を用意して、自分は少しだけ食べて下げ渡す。こうすることで平民は食事に苦労をせず、しっかりと学べるわけです。

 ついでに言えば、そのための席などは学園に事前に申請して、場所が決まって割り振られています。あの男爵令嬢は、しっかりとその範囲内を料理で埋め尽くし、下げ渡しているので問題は有りませんし、その領の学生としてきている平民たちにも行き渡っておりますし、むしろ余剰が出ているほどです。

 そして今回騒ぎを起こした伯爵令息ですが、彼の所は今回は、平民が居ません。

 理由は前回長男が在学し卒業した翌年の為、卒業生たちの一部による教育機関を作り、領内で学習を回すという意図があってのことです。 あとは、ちょうどいい年代が居なかったそうです。

 そういった事はよくある事で、今回やった彼も取り巻きらしき子たちが数名ついているようですね。

 おっとでは、状況に戻って見学してみるとしましょうか。


「はぁ…」


 彼女はため息をつくと、調理場に向かい、再度ダメになった分の料理を頼みました。


「で、そちらのお坊ちゃんは、何処のどなた様でしょうかね」


 お嬢様らしくない口調です。たぶん相当に腹に据えかねているようですね。それもそうでしょう、彼女の所でない限りは、あの量を毎日用意したうえで、卒業まで維持をするなんてことは到底できません。

 普通であれば材料費だけで家が傾きます。ですが今回彼女の家はそれをできる裏技を持っていた。この食堂の食材をすべて、卒業まで無料で供出することにより、学費から何まですべて免除となっているのですから。

 あらら、彼もうおしまいですわね。言うまでもありませんが、だめにした料理の分は、やった側が悪いのです。月ごとの清算ですが、事前支払いをしておき多く食べたりして不足に成れば、その旨がすぐに連絡がいきます。ゆえに彼はもう終わりです。


「お答えいただけないようですなら構いませんが、食事位行儀良く、きちんと食べさせていただけませんか。それともここは戦場や、破落戸達のたまり場なのでしょうか」


 そう言われてしまえば、令息の方は手出しができない、ここでまた暴れようものなら、本当の意味で破落戸に成ってしまうから。


「舐めたことを、ならばこの後に決闘だ」


 そういって、令息は手袋を投げた。周りが慌てて止めたが間に合わなかったようだ。挑まれた彼女の方はと言えば、え、無視しないの、拾ってしまうのですか。


「食後の運動には丁度良いでしょう。受けて立ちます」


 これはまあ、仕方ないでしょうか。


「決闘の受け入れを確認いたしました。この後は私が仕切らせていただきます」


 この食堂で現状の最上位者は私、なので仕方ないとはいえ、ゆったりと食事を楽しみたかったですわ。

 結論から言えば、男爵令嬢の勝利で終わりました。愚かですね、個人での決闘にすればいいのに、取り巻きも書き込んだ結果、普段から腹に据えかねていた皆さんが、令嬢側についてしまいまして、人数こそ同数で有りましたが、ええ、手伝うと言った方の中で、実力を上から数えたほうが早い方々から参加したため、その中の一番上の方一人で全てを終わらせてしまいまして。

 彼女が決闘の結果望んだことは、今回やったことと、決闘の内容を包み隠さず報告書にして、実家に送ること。

 ただこれだけなのですが、食堂の一件も書く時点で、駄目にした料理の量だけで、彼一人の食費で三か月分の請求が行くわけですからね、今後も問題を起こすと判断して自主退学させて実家に強制送還でしょう。

 案の定というか、週明けに彼はいませんでしたから。実際にそのようになされたのでしょう。

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