公安調査員にスカウトされた高校生ハッカーのレイはARMMORPGの闇を暴く

安珠あんこ

プロローグ

 日本全国を熱狂させているARMMORPG【ロールオブザセイバーズ/Role of the Saviors/ROS】。ニューロリンクシステムと呼ばれる、脳内の電気信号を相互通信し共有できるデバイスを利用することで、他のプレイヤーたちと現実と同じように冒険できるこのゲームは、多くのプレイヤーにとって「もう一つの日常」となっていた。


 このゲームの画期的なところは、ARモードを搭載していることである。拡張現実モードとも呼ばれるこのモードは、ニューロリンクシステムが脳内に直接電気信号を送り込むことで、現実世界にプレイヤーだけのゲーム空間を作り出すことができる。ニューロリンクシステムを装着するだけで、このゲームのプレイヤーはゴーグルなどの特別なアイテムを使わずに、ゲームの世界に入り込むことができるのだ。


 VRモードでは、プレイヤーはアバターとしてゲームに参加するが、ニューロリンクシステムが脳内に電気信号を送ることで、プレイヤーはアバターの体験を、自分自身の体験と同じように体感することができる。


 多くのプレイヤーがこの新しいゲーム体験に酔いしれている裏では、とある陰謀が進行していた。


 ROSを開発したシステム・ソフトウェア企業【アヴァロンシステムズ】は、親会社のアヴァロンデバイセズが開発したニューロリンクシステムを通してゲームプレイヤーの思考を操作し、人々を意のままに動かす計画を進めていた。そして彼らの最終目標は、国会開催中の国会議事堂をプレイヤーたちに襲撃させてクーデターを起こし、その後に霞ヶ関、永田町にある中央省庁と最高裁判所の掌握により、日本の三権を完全に手中に収めることだ。


 その異常な動きにいち早く気づいたのは、警視庁公安課サイバー犯罪対策室の分析班だった。


 サイバー犯罪対策室は秘密裏に、ニューロリンクシステムのデータを改ざんし、開発会社であるアヴァロンデバイセズの影響を受けないように改造することを決めた。そして、改造を行うための協力者として、一人の天才ハッカーに白羽の矢を立てた。


 これは、天才ハッカー【レイ】として活動している高校生、桐生レントが、ROSの闇を暴くために奮闘する物語である。

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