第4話

第4話『【投稿者失踪】“一晩中うめき声が聞こえる部屋”に泊まってみた結果』

記録:投稿者A氏のメール/滞在先のホテル従業員インタビュー



---


この記録は、2023年8月10日未明、都内の某ビジネスホテルにて発生した**“宿泊者失踪事件”に関するものである。

消えたのは、YouTuber・ヨウ(仮名)の投稿を視聴していた20代男性(A氏)。

彼は、ある動画を見た後、「自分も同じ体験をしてみたい」とある部屋に自発的に宿泊し、そのまま消息を絶った。**



---


問題の動画は現在削除されているが、

タイトルは『【最凶】泊まると“声が聞こえる部屋”に泊まってみた』。


舞台となったのは、都内某区、築40年の古いビジネスホテル。

「701号室」は、かつて**“深夜になると部屋のどこからか女性のうめき声が聞こえる”**と噂され、心霊スポット化していた部屋である。


動画では、ヨウが1泊し、深夜3時過ぎに突然真顔になり、天井を見つめたまま硬直。

そのまま突然配信が切れ、以降その部屋に関する言及はされていない。



---


A氏が友人に送った最後のメール(2023年8月9日23:47)


> 「今701号室にいる。マジで静かすぎてやばい。

ヨウの言ってた“天井”ってコレ?なんか……ちょっと音する。

確かに、女の人の、咳みたいな、喉の奥で詰まったみたいな──

いや、ちがう、泣いてる?」




以降、連絡は途絶える。



---


ホテル従業員(夜勤)による証言:


> 「朝、部屋をノックしても反応がなくて、合鍵で入ったんです。

中は……誰もいませんでした。

スーツケースやスマホ、財布も置いたままで、バスルームの電気だけがついてた。

あと、壁一面に、爪で引っ掻いたみたいな跡があって……

でも、その跡、**“全部、天井の方向を向いてた”**んです」




また、鏡には指で書いたような曇り跡があった。


そこには、くっきりと──


> 「□□□が みてる」




と、書かれていた。



---


警察の捜索にも関わらず、A氏は現在も見つかっていない。

不思議なことに、彼のYouTubeアカウントは事件の3日後、「よこにいるよ」というタイトルの動画を1本だけ投稿している。

内容は無音、画面は真っ暗で、最後の0.3秒に“□□□”というノイズのようなロゴが挿入されているだけである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る