無理ゲーマー、最高難易度ダンジョンを蹂躙する。
にこん
第1話 なんと死んでしまったんですか
最近のゲームはつまらん、と俺は思う。
「初見殺し排除!」「リトライ無限!」「チュートリアル親切設計!」「死んでもボス戦から再会!」
そんな甘ったれた救済措置ばかり増やしやがって。
気づけば、どのゲームも『死んでも安心!』『詰んでも救済!』のオンパレード。「あっ、これ終わったわ」って思わせることがない。
ユーザーに寄り添うだ? 知ったことか。
俺が求めてるのは、そういうのじゃねぇ。
一手ミスったら即終了。
装備は紙切れ、HPは豆腐、敵は理不尽。
進むだけで心が折れそうで、それでも踏ん張ってクリアする頃にはリアルで三日寝込むような、そんなゲームがやりたい。
みんなにとってのゲームってのがどういうものかは知らないけど、俺にとってのゲームってのは「成功体験を積める」ものだ。
倒す敵ってのは強ければ強いほど倒した後に達成感がある。ゲームも同じだ。
これ無理だろ、って思われるようなゲームほどクリアしたときの達成感は段違い。
クリアしたときの快感はどんなものにも変えられない。
だから俺は気が狂ったように無理ゲーばかり遊んでる。
無理ゲーからしか摂取できないものがあるから。
前置きはこんなものにして今日もやっていくか。
「今日からはこの無理ゲー【エクリプス・ダンジョン】やってくね」
俺は無理ゲー系配信者だ。
ある日気付いた。
俺みたいな無理ゲー好きは珍しいらしいから、ひょっとして無理ゲー攻略動画とかって需要あんじゃね?って。
それで始めたのがゲーム配信。
大御所には程遠いけど、一部界隈では需要があったようでチラホラ見てくれてる人が増えてきた。
コメントも同じく。
"始まったw"
"エクダンは調整ミスの無理ゲーだからなー。さすがに無理だろ"
"開発者も認める調整ミスだもんなー"
"今回ばかりはさすがに無理だろw"
「無理かどうかは俺が決める。そして、それはたぶん無理じゃないんだよ」
"お、来たw名言w"
"これ、言わせたかっただけだろw"
"やったれw"
・
・
・
7日後
"7日間ぶっ通しwおい、さすがにもうやばいってw"
"配信切れって"
"やばすぎてコメ欄が心配の声で溢れてて草"
"初見です。これ、なんの配信?この人もう7日ぶっ続けてるけど"
"エクダンっていう無理ゲー。古いゲームだけど開発者がテストプレイしてないせいで、最初の雑魚が倒せないゲーム、その後は余裕らしいから実質最初の雑魚倒せばゲームクリア"
"解析によると実機でのクリアほぼ無理らしいな。1/10000で起こるバグ使って被ダメージ減らして。さらに理想的な行動パターンを引かないといけない。その確率は1/30000。更には自分のミスはフレーム単位で許されない無理ゲw"
「半分削れたっ!」
"お、3日ぶりの半分削り!"
"このまま押し切ったれ"
"おぉ!削るぞ!いける!"
"ラスト3発!それぶち込んだら勝てる"
"いける!いけるぞぉぉぉぉ!!!"
「いったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!ぜぇ、はぁ。っしゃぁぁぁあ!!おらぁぁぁぁぁ!!!俺は無敵じゃぁぁあぁ!!!俺最強!!!!ふぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
"やりやがったぁぁぁあぁぁ!!!"
"おめでとう!!!!"
"うわぁぁぁぁあぁぁぁ!!!ついにやりやがったぁぁぁぁぁぁ!!!"
「みんな、ありがとう。やっとクリア出来たよ。ムリゲニウムの接種ができた。これを栄養に更なる無理ゲーに挑める」
"ムリゲニウムw"
"お前らもムリゲニウム摂取しとけw"
「うぐっ……あがっ……」
"歓喜で震えてる?w"
「おぇっ……(ドチャッ)」
"え?吐いた?やばくね?"
"誰か救急車呼べよ。よく考えたらこいつ7日飲まず食わずじゃね?"
"そういえば、なにか飲む音とかも聞こえなかったな"
"やばいやばいってぇぇぇ"
◇
「うぅ、どこだ。ここ」
「目覚めましたか」
「あなたは……」
目の前に女がいた。
優雅にお茶を飲んでいる。
天使みたいな輪っかをつけてて、白い衣装に身を包んでる。
一言で言うと……
「女神です」
「あぁ、ひょっとして。俺死んだ感じか?」
「はい」
「やっぱそうか。最後に残ってる記憶がゲロって、顔面突っ込んだところだからなー。そのあとこんなところにいたら察するものがある」
「あなたにふたつの選択肢を与えます」
「ふたつ?どんな?」
「1つ目。このまま天界の住人になる道。2つ目。ゲーム的な異世界の住民になる道」
ゲーム的異世界ってことは……答えは決まっている。
考えるまでもないんだなこれが。
「より険しい道を」
ピクリと女神は耳をそばたてた。
飲んでいたカップを机に置くと改めて俺と向かい合う。
まるで俺に興味が出たといった素振りである。
「珍しいものですね。異世界を選ぶなんて。大抵の人は天界の住人になるのですが」
「進む道ってのは険しければ険しいほどいいもんだ」
「では、チートの付与など、女神の加護も必要ないと」
「いらんよ。そんな救済措置。無理ゲーは友達。難易度は高いほど上がっちゃうね」
「自信たっぷりですね」
「俺はあのエクダンをクリアしてきた男だ。今ならなんだってやれる。そんな万能感に満ち溢れてる。ぶっちゃけ俺、最強だし。問題ないっしょ」
「よく分かりませんが。では異世界に転移するという形で進めさせていただきます」
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる。
死んでしまったのは予想外だったが、俺の心は大きく震えていた。
無論、これから始まる更なる無理ゲーへの期待から。
早く転移してぇぇぇぇぇぇ!!!!
これからどんな無理ゲーが俺を待ってる?!
マジで楽しみなんだけど?!
自分の体で無理ゲー体験できるとか、身に余る光栄だわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます