6章 裏切り

 放課後になった。僕の家にはコープ先生以外のみんながいた。

「先生遅いね」

 メラが言った。コープ先生はいつも僕の次に来ていたので遅いと思う。

 10分くらいしたあとにコープ先生がやってきた。

「みんな、ちょっと聞いてくれ」

 コープ先生は息を切らして、少し落ち着いたあとに話しだした。

「用水路が王国兵士に塞がれていたんだ」

「それはつまりどういうことなの?」

 メラが言った。

「つまり私たちが王国の外に用水路を使って出たことが王国にバレたってこと。誰かが外に出たのが見つかったか、この中の誰かが用水路から外に出てるっていう情報を漏らしたか、ってことね」

 レッパが言った。つまり、裏切り者がいる可能性もある。一応僕は違うけど。

「メラじゃね。裏切り者」

 トランが言った。カナも

「確かに。王家だから一番国王に会ってるし」

と言った。

「いや違うぞ。私は違うぞ」

 メラは怒り気味に反論した。ここはリーダーの僕がまとめないと。

「みんな、落ち着いて。たぶんここに裏切り者はいない。大丈夫。みんなを信じて」

「そうだ。俺も最初の時はメラが王家だからあやしいと思っていたが話していくうちにこいつ、本当に外の世界もインベルのやってたことも知らねえんだな〜と思った。こいつは裏切らねえぜ」

 みんなしーんとしたがレッパが拍手をするとみんな始めた。

「でもさ、それだったらなんで用水路塞がれたの?やっぱメラじゃん」

 トランはまだ言っている。

「はいはい。もうその話はおしまい。今日は旗を決めよう」

 この日は旗を決めて何事もなく終わったのだが、翌日、事件は起きた。


 今日、つまり12月5日。最終確認の日だ。上手くいくだろうか?きっとみんなそんな不安があると思うので今日の解散前にみんなで勝つぞ、オオーとやりたいのだが。

 今、家に来てるのは僕とカナだけ。コープ先生はミレといっしょに用水路を解放してポルさんの家に火薬を取りに行くのだとか。コンコンと音がなってドアが空いた。トランが入ってきた。顔が青ざめている。

「みんな、と言ってもリベラとカナだけか。ちょっとこれ見てくれ」

 そこには新聞があった。


王家新聞 号外 12月5日発行

 本日の先ほど、王家反乱罪でカル・ジョンソン(12)を逮捕した。カルは学校の友達にウソの情報を伝え、反乱を扇動した。この情報を国王インベルに伝えたのは、メラ・アプル王女(12)だった。カルは学校の仲間とともに自由同盟という組織を作った。組織の中心人物としてリベラ・マーク(12)、レッパ・リンゴ(12)がいる。他4名ほど。メラ王女はしばらく自由同盟に潜入捜査をしていた。本日、メラ王女はリベラ、レッパを所定の場所まで誘導し王国は両氏を本日中に逮捕する予定。


「なにこれ。やっぱメラ裏切ってんじゃん」

 カナが言った。えっ。本当に裏切ったのだろうか?

「そうだ。メラは裏切ったんだ。どうする?」

 トランも言った。僕の心はずっと混乱している。ウソの情報かもしれない。いや、王家新聞はウソをつかない。いや、でもメラは裏切らないはず。いや、でも、でも

「リベラ、さっきから聞いてる?」

 我に返った。

「あんま聞いてなかった」

「もうメラは裏切ったんだ。このあとここに来ると思うから縄で縛り上げようぜ」

「えっ。それはかわいそうなんじゃ」

「裏切り者に情けは不要。もうこれでやろう」

 トランもカナもメラが裏切ったと信じている。どうしようか?本当にメラは裏切ったんだろうか?

「まず家にメラが入ったら俺がこの剣でメラの動きを封じ込める。その間にカナはまずメラの後ろの手を縛ってくれ」

「わかった」

「ちょっと待って。まだメラが裏切ったか分かんないじゃん」

「いや、裏切ったんだ。これをやらないと俺たちが捕まるぞ。もうメラは見捨てろ。あいつは裏切ったんだ。王家の子供だからな」

「うーん、わかった」

と言ったが、本当はまだ信じれてなかった。

「次に腕を含んだ体全体を縛ってくれ」

「オッケー」

「で、ここらで外から鍵を掛けれて内側から開けれねえのは、そうだ。掃除用具入れだ」

「あっ、そっか掃除用具入れは外からしか開けれない」

 もう一度2人を止めようとしたが、もうやめた。新聞は正確だ。王家の子供だから国王に一番会っている。やっぱりメラは裏切ったんだ。メラは裏切ったんだ。ショックが大きい。まだ疑っている心もある。忘れよう。もうメラは裏切ったんだ。

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