第五話 魔物退治
新たにマリアを加えて生活をすることになった。でも、彼女ができることは力仕事ばかり。正直微妙だ。
「シルヴィア様、どうかされましたか?」
「何でもない。それより、トイレ掃除は終わった?」
「終わりましたよ」
掃除はできるということだったので任せた。あとで確認しよう。
「マリア、この近辺に魔物が出現するって言っていたよね。どんな魔物が出てくるの?」
「少数のゴブリンやフェンリルです。畑を荒らされるかもしれません」
「畑が狙われるの? それはいけないね。退治しないと」
水を得た魚のようにマリアのやる気が上がった。自分の仕事がやっとできると思ったのか。まあいいけど。
「私は魔法が使えるから良いけど、サラは何もできないわね」
「サラには留守番をしてもらいましょう。少数のゴブリンなら私ひとりで十分です」
ゴブリンを甘く見ている。もしその油断が命取りになったら大変だ。
「油断はしない方が良いわよ。ゴブリンは凶暴だから何をされるか分からないわ」
「そうですよ。ゴブリンに襲われた女子がいるくらいなんですから」
「すみません。自分の力を過信していました。気を付けます」
何でも過信するのは良くない。初心に帰って行動した方が良い場合もある。分かってもらえて良かった。
「では、少し近辺の森を見て回りましょう」
「ちょっと待って。装備を整えないの?」
「もちろん整えます。武器を用意しますか?」
「護身用にソードと短剣を準備するわ。ちょっと待っていて」
さて、護身用の武器をどうやって具現化しよう。鉄製のソードと短剣はすぐに刃が欠ける。なら、アダマンタイト製のものにしよう。
「えーっと、アダマンタイト製のソードと短剣を」
アダマンタイトの性質や特性を書物で調べ、ソードと短剣と一緒に書き記した。よし、具現化してみよう。
「では、召喚!」
紙が燃え、アダマンタイト製のソードと短剣がでてきた。さて、切れ味はどうだろう。
「サラ、りんごを頂戴」
「はい、只今!」
りんごをまな板の上に置き、アダマンタイト製の短剣で切ってみた。
「凄い切れ味ですね。一振りで肉が引き裂かれそう」
紙を切ったかのように軽々と切れた。強度はどうだろう。
「強度は……、硬いわね」
それもそうだ。なんたって希少金属のアダマンタイトなのだから。
「これで準備完了ね。さあ、行きましょうか」
「はい!」
腰にある鞘に短剣とソードを差した。
なかなか様になっている。だけど、戦えないと意味がない。まあ、護身用のための剣術と体術は習得済みだけどね。
「マリア、まずどこから行く?」
「家の裏手の森に行きましょう。何か潜んでいるかもしれません」
「分かった。背中は私に任せて」
マリアを筆頭に裏手の森に入っていく。
ゴブリンって確か洞窟に住んでいるって聞いたことがある。フェンリルは分からないけど、もし遭遇したら退治しよう。
「シルヴィア様、何か聞こえませんか?」
「狼の遠吠えが聞こえる。フェンリルかな?」
慎重に森を進んでいく。すると、一匹の狼らしき獣が姿を現した。
「シルヴィア様、フェンリルです! 仲間を呼ばれる前に倒しましょう!」
「うん」
マリアがフェンリルに斬りかかる。だが、当たらない。
「この!」
三回目でようやくフェンリルを傷付けることができた。でも、私は油断しない。遠吠えによって集まってきたフェンリルをアダマンタイト製のソードで蹴散らす。
「シルヴィア様!」
「マリア、大丈夫よ。これくらい造作をもないわ!」
さすが、アダマンタイト製。フェンリルが紙切れの如く引き裂かれていく。この調子なら今日中にすべて退治できるかも。
「シルヴィア様、後ろ!」
「はああああああ!」
ソードを突き出し、フェンリルの腹部に貫通させた。
「シルヴィア様、お見事です」
「武器の性能が物を言うわね。これでお終いかしら」
フェンリルの死体がそこらへんに散らばっている。私達は慎重に進み、その場から離れる。
「シルヴィア様、ゴブリンも退治されますか?」
「ふたりで大丈夫かしら。もし危険なら騎士団を呼んでからにしましょう」
ゴブリンに捕まって孕まされたらたまったものじゃない。この場合、騎士団の派遣を要請した方が無難だ。
「確かに危険ですね。今日はこのくらいにしましょうか」
と思った束の間、茂みから緑色の肌の小鬼が姿を現した。
フェンリルの遠吠えを聞きつけて様子を見に来たか。このまま帰すと仲間を呼ばれる危険性がある。ここで仕留めるか。
「マリア、仕留めるわよ」
「はい!」
ゴブリンが弓を構えた。その瞬間――――。
「甘い!」
一振りでゴブリンの両腕を切り落とした。あとは足!
「逃がさない!」
両足も切断した。これで逃げることはないだろう。
「シルヴィア様、とどめを!」
「うん」
最後に喉を突き刺し、息の根を止めた。
ふう……、間一髪だった。
「仲間を呼ばれる前に倒せて良かったですね」
「そうね。でも、油断しないで。どこかに潜んでいるかもしれないわよ」
周囲を警戒する。今のところは殺気を感じない。
「マリア、今日のところはこれくらいにしておきましょう。あと、王都の騎士団にこの件について報告書を」
「分かりました。後程、王都に報告書を提出します」
「さあ、帰りましょう」
「はい!」
家に向けて森を歩く。
ステータスが無限だと、こうもあっさり倒せるのか。フェンリルとゴブリンにはそれらを試す為の犠牲になってもらった。少し悪い気がするけど、襲ってきた魔物が悪い。安らかに眠れ、魔物たち。
「やっと森を抜けた。さて、汗かいたからお風呂に入ろう」
「お風呂? 家にあるのですか?」
「あるわよ。マリアも入る?」
「はい、入らせていただきます」
玄関の扉を開けて家の中に入った。
サラがキッチンで料理をしている。今日のおかずは何だろう。楽しみだな。
「あっ、シルヴィア様、おかえりなさいませ」
「ただいま。魔物を退治してきたわよ」
「本当ですか!? 凄いですね」
「このソードと短剣のお陰よ」
装備を外し、お風呂場に向かう。
そう言えば、洗濯機を準備していないな。あとで設計図を描いて具現化させよう。
「電源オン。それからの自動オン」
湯船の排水溝に栓をした。お湯がゆっくりと流れ出ている。
お湯が貯まるまで十五分くらいかな。それまで洗濯機の設計図を描いておこう。
「マリア。今、湯船にお湯を入れているからちょっと待って」
「シルヴィア様、先に入らないのですか?」
「私はやることができたからあとでいいわ。それより、もう報告書を書いているの?」
「はい、早い方が良いと思いまして」
「仕事が早いわね。あとは任せたわ」
さて、自室に戻って洗濯機の設計図を描くか。
「サラ。私は自室に戻るから、何かあったら呼んで」
「分かりました」
魔物退治も無事終わった。さて、自室に戻って作業に取り掛かるか。
「洗濯機。洗濯機~」
私は自室にこもり、洗濯機の設計図を紙に描いた。
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