第一章 辺境の地へ
第一話 いざ、辺境の地へ
クリフォード様からの婚約破棄を受諾してから数ヵ月後。私は着々と辺境の地へ旅立つ準備をしていた。
「よし、家の設計図はこんなものでいいか」
紙に書いたものを具現化するにはたくさんの情報がいる。家を具現化するために建築技術を勉強したくらいだ。あとは電気を発生させる水力発電装置。現代社会の日本では天才科学者と称された私だ。これくらいお安い御用と言っても過言ではない。
「家の方はこれくらいで良いかな。あとは家具を考えよう」
必要最小限の家具があればいい。タンスやドレッサー、テーブルセットなど、あとで必要になってくるだろう。
「物質の具現化はそのものの性質や特性が必要になってくる。色々データを集めないと」
実際あるものに触れ、性質や特性をメモしていった。それが今となっては重宝されている。物を生み出すというのは結構大変だ。
「ふう……、今日はこれくらいにしよう」
粗方準備が整った。あとはどんな理由で辺境の地に行くかだ。どうしよう。
「お父様に相談してみよう」
設計図などを鞄にしまい、お父様がいる書斎へ。廊下にはたくさんのメイドが歩いていた。
「シルヴィア様、おはよう御座います!」
「おはよう」
挨拶を交わし、書斎に急ぐ。サラは今、洗濯をしている最中だ。
コンコン。
「お父様、シルヴィアです。入ってもよろしいでしょうか?」
『シルヴィ、ちょうど良いところに。入ってもいいよ』
「失礼致します」
扉を開けて書斎の中に入る。
お父様が書類に目を通している。仕事中かな。
「シルヴィ、辺境の地に旅立つ準備は進んでいるかい?」
「はい、粗方終わりました」
「そうか。実は、国王様に手紙を出そうと思っているんだ。シルヴィが傷心で辺境の地に赴き、心を癒すとね」
「それは良い考えだと思います。是非、手紙を出してください」
傷心で辺境の地に赴き、心を癒すね。良い考えだと思う。それより、辺境に旅立つ準備のことを何で知っているんだろう。もしかして、またサラが告げ口した?
知られてマズいことではないから良いけど、能力のことが他人に知られたら大変なことになる。サラには他言無用だと伝えよう。
「シルヴィ、辺境の地と言ってもグランヴェル領内だ。手が届く範囲で行動するように」
「分かりました。ところで、辺境の地は未開拓ですか?」
「今のところ未開拓だね。だけど、家を構える土地は準備してある」
「そうですか。ありがとう御座います」
未開拓地か。家を建てたあとは周辺を開拓して、自分好みにしていくのも悪くない。そう言えば、川はあるのだろうか。水を引かないと生活できない。
「お父様、未開拓地には水辺はありますか?」
「川が近くに流れているからあると思う。それより、食料はどうするんだ? 自分で作るのか?」
「はい、自分の手で作物を育てようと思っています」
「そうか。あと、シルヴィの専属メイドのサラはどうする? 連れて行くか?」
「連れて行ってもいいですか?」
「もちろんだよ」
サラとふたりで生活か。家事とか任せることができそうだな。それより、食料だ。作物が育つまでの間、買い出しに行かないといけない。近くに村があればいいな。
「他に聞きたいことがあるかい?」
「近くに村はありますか? 食料調達で行きたいのですが」
「あるぞ。プリム村という小さな村だがな」
あるのか。良かった。これで食糧問題は解決した。
「あの、お手紙はいつお出しするのですか?」
「今日かな。シルヴィはいつ向かう?」
「準備は整っているので明日でも構いませんよ」
「なら、こちらも準備をする。準備が整ったら連絡するから待っていてくれ」
「分かりました」
お父様の方でも準備があるのか。忙しいのに申し訳ない。
「では、お部屋に戻りますね」
「うん、またな」
書斎を出て、自室に向かって廊下を歩く。
すべての準備が整ったら辺境の地へ旅立つ。さて、未開拓地をどう発展させていこうか。楽しみだ。
「あっ、シルヴィア様!」
「サラ、洗濯は終わった? お疲れ様」
「今さっき終わったところです。シルヴィア様はお部屋へ?」
「そうなの。あと、話があるから部屋に来て」
「分かりました」
サラを同行させた。
この子にも色々聞かないといけないことがある。同じ屋根の下で住むから役割分担とか決めておかないといけない。結構大変だな。
「サラ、私が辺境の地へ旅立つのは知っているわね」
「はい、存じ上げております」
「そこで、貴女も連れて行くことになったの。ふたりで過ごすことになるけど、大丈夫?」
「私もですか? もちろん、大丈夫ですよ」
「そう、良かった。住まいは私が準備するから、あとのことは任せるわね」
「家を建てるのですか? どうやって?」
「それはね」
自室のテーブルに置いてある紙にりんごを描いてデータを書き足し、具現化させてみせた。
「え? りんごが紙から出てきた! 何をされたのですか?」
「私は紙に描いたものを具現化できるの。まあ、そのものの特性や性質を知っておかないといけないけど」
「凄いです。あっ、このりんご食べてみてもいいですか?」
「いいわよ」
サラが具現化したりんごを食べた。なんか驚いている。
「本物のりんごと同じだ。これなら何でも具現化できますね」
「そうね。でも、勉強しないといけないわ」
同居人であるサラには教えておいた方が良いと思って教えたけど、言いふらされると厄介だ。一応口止めしておこう。
「サラ、このことは誰にも言ったら駄目だからね」
「分かりました。ふたりだけの秘密ですね」
りんご、全部食べちゃった。そんなに美味しかったのかな。
「では、私は紅茶とお菓子の準備をしますので退室させていただきます」
「分かった。それではまた」
サラが退室した。
辺境の地へ旅立つ日は刻一刻と迫っている。細かな準備はぼちぼちするとして、未開拓地をどう開拓するか考えよう。
「ショベルカーが必要かな?」
私は思い思いに考えを巡らせた。
*
―――お父様の準備が整い、辺境の地へ旅立つことになった。
「シルヴィ、何かあったらすぐに戻ってきなさい」
「分かりました。それでは行ってきます」
サラと馬車に乗って辺境の地へ旅立った。
「シルヴィア様、家事はお任せください!」
「うん、お願いね」
やる気満々だ。まあ、私の能力を知ったんだ。このあと何が起こるか楽しみなのだろう。
「サラ、少し眠るわ。着いたら起こして」
「分かりました」
昨晩まで生活に必要なものを紙に描いていた。そのせいで寝不足だ。うーん……、頭がボーっとする。
「おやすみなさい」
「ごゆっくり」
サラの肩に頭をのせ、ゆっくりと目を閉じた。
これから未開拓地を開拓し、自分好みの住まいを築いていく。頑張らないと。
「んっ……」
今日は最高に良い気候。晴れていて心地が良い。
睡魔が……。
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