「ラジオ局」

 …ラクをしようとしちゃあ、ダメじゃない。


 うるさいでしょ?

 音響関係おんきょうかんけいこわれていてね。


 …ラジオ放送ほうそうなら歴史れきし文化ぶんか


 そういった情報じょうほうを。

 あつかっているんじゃないかって?


 たしかに。


 投稿者とうこうしゃから貴重きちょうな話を提供ていきょうしてもらったり。

 専門家せんもんかに話をしてもらうこともあるわ。


 …でも。

 それらすべてを集めているワケじゃあ無い。


 本気ほんきで知りたいのなら。


 私みたいな。

 ラジオパーソナリティじゃ、なおさらね。


 博物館とか。

 図書館とか。


 専門家に話を聞いたほうが。

 ずっと良いから。


 …ラジオ局でも。

 情報じょうほう精査せいさはするけれど。


 間違まちがって放送して。

 訂正ていせいすることだってあるし。


 昔に正しいと放送されていた情報ないようが。


 今になってちがっていた。

 なんてこともあるのよ?


 価値観かちかん見方みかたなんか。

 時代によってコロコロ変わるし。


 …ああ。

 このせられた写真?

 

 気になる?

 見ないほうが良いわよ。


 いわゆる【見たらなんとかけい】だから。


 封筒ふうとうに入っていたものを。

 生放送なまほうそう紹介しょうかいしたの。


 開けると手紙が入っていて。


 さらに言えば。

 二重にじゅうになっていて。


 二つ目の封筒ふうとう電灯でんとうかすと。

 四角いものが、うっすら見えたから。 


 のりふうがしてあって。

 ずいぶんと年季ねんきが入った感じでね。


 ――手紙には。

 こと経緯けいいが書かれていて。


 なんでも、中身は写真でね。

 ある建築物けんちくぶつ内部ないぶからったもので。


 まともに見た親戚しんせきや友人は。

 みんな、くなってしまったと。


 手元に来た時に。

 処分しょぶんこまって。


 うらにしたまま。

 封筒に入れたきりで。


 何年もってから。


 ふと、思い出して。

 放送局ほうそうきょくに送ったと。


 見るか、見ないか。

 そちらで決めてくださいという内容で。


 …夏の深夜放送しんやほうそうだった。


 この手の。

 オカルト系の投稿とうこうは良くあってね。


 まわりのスタッフも、私も。

 みんな信じていなくて。


 早朝そうちょうに。

 きょくのポストで見つかったそうだけど。


 手紙の内容も面白いからと。

 ここまで来たわけで。


 …そして、私は見た。


 あっというだった。


 世間せけんじゃあ。

 心筋梗塞しんきんこうそくという話だけど。


 向こうとじゃあ。

 見えているものが違うから。


 変わってしまうの。


 あの写真を。

 見る前と見た後では。


 何もかも。

 見えている景色が違ってしまう。


 写真は。

 あくまできっかけなの。


 本当はそばにあるものなのに。


 くなって。

 初めて、見えるものがあるから。


 …それとも。

 私が、変わってしまったのかしら?


 そもそも。

 ここにいる私も。


 本当に存在そんざいしているのかさえも。

 分からないのだから。


 ――聞こえるでしょう?

 この延々えんえんながつづける悲鳴ひめいが。

 

 アレは私の断末魔だんまつま

 亡くなる直前ちょくぜんに口にしたさけごえ


 今、話している。

 このあいだでさえ。


 流れている。


 私の口をはなれて。


 いつまでも。

 流れ続けている。


 だから、もはや私は。

 私じゃあいのかもしれない。


 …ねえ。

 アナタたちはどうなの?


 いや、分かってる。

 学園から来たのでしょう。


 最初に自己紹介じこしょうかいした。

 それ以前いぜんから、分かっていたから。


 視点してんが変わったのだから。

 

 見えないものが。

 見えるようになったのだから。


 アナタたちを見れば分かる。

 

 写真のせいで。

 学園から来たと一目ひとめで分かる。

 

 だって。アナタたちはもう――

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