第四話・ロップ・イヤー家の匠職人の革靴屋は長男で……ギルド職人たちの羨望者

 オクトとマーチは、職人たちが集まる〝職人街〟にやって来た。

 さまざまな、店が並ぶ街の中でマーチは一軒の革靴屋に入っていく。

 そのまま、工房まで普通に入ったマーチは、作業をしている一人の職人男性に話しかける。

「よっ、ジャニュアリーこと職人長の【ジャニー】お兄ちゃん……彼女にプレゼントする革靴はどこまで進んでいる?」


 寡黙かもくに革靴を作っている男性が、少し間を開けてタメ息を漏らしながら言った。

「冷やかすつもりで来たのか……客からオーダーメイドされた靴が先だ」

「相変わらず、真面目……説明しよう、ジャニーお兄ちゃんは、ロップ・イヤー家の長男で、職人たちのギルドから慕われているのだ」

 ジャニーが呟くような口調で言った。

「これは、オレ独自の家訓だが……『よく働くニワトリは卵のうちから鳴く』口を動かすより、手を動かせ『口ばかり動かしてると、舌の上にキノコが生える』……ところで、君は手先は器用な方かな?」

「まぁ、それほど不器用でもないけれど」


「それは、良かった……じゃあ、こんなコトは朝飯前だろう」

 そう言うと、ジャニーは近くにあった、西洋剣の原型みたいなのを手にして、剣を打ち鍛える台の金属台の上に置いて。


 金属のつちを振り上げて叫んだ。

「まずは、剣の柄から!」

 ジャニーが槌を振り下ろすと、火花が散って革を巻いた剣の持ち手が完成した。

 思わず声を漏らすオクト。

「えっ⁉」


 二回目の槌が振り下ろされると、今度は棒状のつばが完成する。


 さらに驚くオクト。

「え────っ⁉」

 三度目の槌を振り上げてジャニーが言った。

「これが、ラストぅぅ!」

 刀身に今までで、一番激しい火花が散って剣身が完成した。

 ジャニーが、三回の槌打ちで完成した剣を掲げて言った。

「刃は付けてないから儀式用には、このくらいで丁度いいだろう……どうだ、意外と簡単だろう……オクトくんも、職人の世界に入って三つ槌の剣を作ってみないか」


 ジャニーの、職人誘いを辞退するオクト。

「いやいやいや、オレそんな魔法みたいなコトできないから」

「心配するな……オレが手取り足取り、職人芸を教えてやる。仕立て屋はどうだ──アホには見えないドレスを作れるまでの技術なら、数ヶ月で習得できる」

「結構です」


  ◆◆◆◆◆◆


 マーチとオクトは、屋敷内にある大病院に到着した。

 病院内は巨大なメインストリートか、ショッピングモールのようで、大勢の患者や

看護する者たちが行き交っていた。


「ピーポーピーポー! どいてどいて! 道を開けて! 急患さまのお通りよ! ピーポーピーポー」

「あはははっ、あはははっ」

 口サイレンを鳴らしながら、ストレッチャーを数人で足早に押している看護服の袖に数本の線と数個の星マークが付いた、看護師長らしき少女にマーチが話しかける。

「屋敷病院のロップ・イヤー家次女の医療長【エイプリル】久しぶり……忙しそうだな」

 エイプリルは忙しそうに、姉のマーチと目を合わせないようにして一言。


「少し空気読め……屋敷壁の根元に生えていた〝死ぬまで笑っていたい茸〟を誤食した急患を運んでいるところなんだから……ピーポーピーポー」

 ストレッチャーを押して、走り去っていくエイプリルの背中に向かってマーチが、大声で叫ぶ。

「警察長と消防長を兼任している総合長で、ロップ・イヤー家の家長……お父さんの【ジュライ】が、どこにいるのか教えてくれ」


「どうせ、いつもの雨水を溜めた人工ダムの貯水池で一日釣り三昧でしょう……平和な屋敷内で、たいした事件も事故も起こらないんだから! ピーポーピーポー」

「あははは、あははは」

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