男女比1:100の世界で俺の××が爆発寸前です!

量産型童女

12月中旬まで不定期 書き直し中

1章 初めまして、異世界殿

1森の中にて

 暗く、静かな夜。1人の少女が潜んでいた。黒く美しい髪を束ね、仲間の知らせを待つ。今回の任務は野盗の迎撃、そう聞いているし、そのくらい単純な方が彼女には向いている。



椿ツバキ姉様!気配が増えております、数は既に20をこえています!あとこれ夜食です!」


「ありがとう、他の者は?」


「全員配置についてます!作戦通り、姉様から一番槍を、と」


「了解した。では私から行く。インカム繋いでおいてくれ」


「はいさ!索敵は私におまかせを!」



 椿と呼ばれた少女は木刀を構え森の奥に走る。左耳につけたインカムから先程の少女の声が聞こえる。実はあまり機械に疎くないので仕組みやらはよくわかってなかったりするが彼女が示す方向に行けば敵はいる。そして木刀を振り下ろして意識を狩る。それだけでいいと聞いていた。


 森の中を突っ切ること1分ほど、木の上に賊の姿を捉える。賊は3人。苦戦するビジョンは彼女には無い。敵を視認した瞬間、目が淡く光る。

 一呼吸で木の上に跳躍。賊の1人の面をかち割る。


「スマンが仕事だ。しばらく眠れ」


「っ!刺客か!まだ舘から2kmは離れてるんだぞ!」


「ウチには優秀な人材が多いだけだ」



 素早く2人目の首筋を捉え、木の上から落とす。そのまま逃げようと背を向けた3人目の背中に飛びつき木刀を打ち込む。



「3人捕らえた。千咲、そちらは?」


『はい椿姉様!今そちらに追い立てております。合図し次第挟み込みます!』


「わかった。少しじっとしておく…」



 返信に答えた瞬間、暗いはずの山の中腹で一瞬、なにか小さく光ったのを見た。

 裏手の森とはまた別の方向。しかし山方面からだと村の方には見晴らしのいい原っぱが館との間にあるため警戒程度にして人員を裂いていない事を聞いていた。



「千咲、山の方には誰かいるか?」


『えっと…居ないはずです!』


「山の方で今なにか光った。恐らく私が1番早いだろう。万が一もある。少し見てくる」


『分かりました!報告はこちらでしておきます!椿姉様お気をつけて!』



 そうして彼女は光った方に向かって走り始めた。


 ※※※※



 接敵したのは走り始めてから3分もたたない頃。

 気配は5つ。お互いの瞳に姿を捉えただろう。


 賊の3人が姿を表す。覆面に黒装束。恐らく忍の一派、隠れているやつもいるかもしれない。

 闘気を練る。全身に纏うイメージを維持することで、身体能力の強化を測る。特に私の闘気は今の村の中なら1番と自負している程に硬く、勇ましい。


 賊がこちらの闘気に反応し素早く守りの体勢を取る。こちらはかまわず接近。1番前の賊のみぞおちに木刀を叩き込みに行く。賊も狙いに気がついたのか、目が淡く輝く。闘気を練った証拠だ。



「腹に力入れろ、全員にぶち込む」


「は!小娘が喋る余裕があると思うな!」


「イキってんじゃねぇぞガキが!」


「…潰す」


 目の前にいた女賊の1人にまず一撃。しかし木刀は相手の刀に防がれる。二撃三撃と身体めがけ打ち込むが相手の闘気を纏った刀を割ることが出来ない。


 初撃で打ちのめせなかったので、あえて距離を取る。まだ姿を見せてない賊がいたら困る。目の前の相手に気を取られていては後ろから打たれかねない。



「いいのか?こっちはコレがあるぞ?」



 後ろの2人が拳銃を構える。木々の隙間から漏れる月明かりが拳銃を光らせる。

 トリガーを引く刹那、闘気を前方に厚めに纏うと同時に地面を蹴る。銃弾は頭に飛ぶが、闘気によって頭蓋への侵入を阻まれる。

 殺せなくても止められると思っていたのだろう、相手は懐へ接近を許してしまった。


 至近距離で振るった木刀はそのまま1人目の腕をへし折る。鈍い音と同時に女の低い悲鳴が聞こえる。後ろの影から2発、3発と打たれるがそれも私の身体を貫くに至らない。


「お前!この距離だぞ!」


「守人を舐めすぎだ。拳銃程度はこの距離でも弾ける」


『お姉様?!今銃弾をはじきました?!そんなことできるのお姉様くらいですよね!』



 拳銃では効果が無いのがわかったのだろう。賊が拳銃を捨て懐の刀に手を伸ばした直後、バサりと何かが降ってきて賊の頭を覆う。

 紅く輝く瞳と青白く光る体を持つネズミだ。



「うぁぁぁぁ!くそ!何だこれ!」



 慌てて振り払おうとするが、1匹、また1匹と輝くネズミ達に賊が覆われていく。

 3人目の賊が助けようと手を伸ばしたが、その手を先に握り、折る。



「くそ!い、いたいい…いぃ!」と斜面を転がっていく賊を尻目に、ネズミに覆われ声も出せなくなった女の方に向かう。

 叩きつけた奴と腕を折った奴は痛みでしばらくは闘気をまともに練ることはできないだろう。こいつももう戦意どころか意識があるかも分からないし、おそらくこのままだとネズミが器官に入って食い荒らす。


「千咲、終わった。ネズミに襲わせるのをやめてくれ」


『はい!分かりました!』



 このネズミは千咲の能力で生まれた霊獣。聞いた話だと無限に増えていくわ言うこと聞かないわと使い勝手が悪いと嘆いていたが、数の脅威は時に凄まじ効果を生むだろう。



「もうおしまいなのか?今までどう過ごしてきたのか知らないが、この程度で里までやってくるとは、命知らずにも程がある」


「ご、ゲボッ、ふざけるな!お前が異常なだけだろ!」


「身体を鍛えないからだ。なーに、お前達を捕らえた後しっかり鍛えてやる」



 そうして隙だらけの首筋に木刀を振るう直前、足元から閃光が走った。


 ※※※※※


「新手は2人か、何かしらが爆発した。千咲、こっちに応援よこせるか?」


『すみません!今の爆発でネズミが逃げちゃったみたいで!集めるのに少し時間がかかります!』


「ならそこまで耐え抜く、急いでくれ」



 闘気を纏わせてる身体は本来なら両足持っていかれた程の爆発もかすり傷くらいで済む。

 だが爆発によって崩れた斜面の頭上を相手に取られた。


 能力での爆破なら厄介、身体の傷はともかく吹き飛ばされれば追えなくなる。

 敵はまた増えて3人、だがお互い今の爆発で人が集まってくる。そうなると互いに求めているものは1つになる。


「貴様らは短期決戦、お望みだろ?」


「喋ってる暇もないだろ、はやくこい」


「いや待て待て、私は怖いんだが?なんでほぼ無傷なのあいつ?」



 距離は15mも離れていない。距離を離されると恐らく追いつけなくなる。だが奥の手はいつも手の中にある。


 椿は闘気を纏わせた木刀を思いっきり投げる!

 木刀は風を切り、まばたきを許さない速度で賊の肩を貫く。

 一瞬の出来事、理解できなかった賊は深々と肩に刺さった木刀をぼぉっと確認。

 そして痛みを理解する頃には既に椿はその木刀に手をかけ引き抜いていた。


 もう賊と距離は半歩といったところ。相手の手元に得物は無し、ならば振るえば椿に分がある!


 そして、椿の木刀と相手の手刀が交わる直前、ガサリともうひとつ、影が草むらから飛び出してくる。

 正直警戒してなかった訳ではなかったが、このタイミング、ここにいるが構えた。



「…良かった!人がいた!いやぁ、すみません、助けて欲しく…て?」



 先程ネズミに襲われたもの、腕を折られたもの、肩を貫かれたもの含め、椿でさえもまるで妖怪を見てしまったかの様に固まってしまった。


 なぜならここに居てはならない生物が今目の前にいるからだ。


 髪は短く黒色。本来女にあるはず特有の胸の脂肪も見当たらず、少し筋肉質な平べったい胸板が顕になっている。


 そしてここにいる全員が、男の股にぶら下がっている、奇妙なを目撃してしまった。


 そう、その男、この森の中で全裸で女性陣の前に姿を現してしまったわけだ。





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