第50話 ユウト、完全復活する
【渋谷ダンジョン 第7層】
ここは、渋谷ダンジョンの中でも、俊敏性が要求される階層だった。
最近のユウトはこの層を避けることが多かったが、今日はめずらしく、
「試したいことがある」
と言って、やって来たのだ。
シズカはいつものようにカメラを回していた。
でも――その日の彼は、違った。
「……もう、迷いはないよ」
そう言って剣を構えたユウトは、どこか“別人”のように見えた。
(あ……これは)
息を呑んだ。
身体が大きくなってから、ずっと重たそうにしていた背中が、今は嘘みたいに軽やかだった。
いや、実際に――彼は地を滑るように動いたのだ。
一歩目。
踏み出したはずの足が、ほとんど地を蹴っていなかった。
(浮いてる……?)
目の前で繰り広げられる動きは、人間のそれとは思えなかった。
加速。跳躍。切り裂くような一太刀。
ユウトの動きが、まるで“重さ”から解き放たれていた。
剣も小太刀から長剣に変わっており、その間合いは、以前の倍以上になっていた。
(あのユウトが……こんなに楽しそうに剣を振ってる)
不思議だった。
私は戦う人間じゃない。
でも、今のユウトを見ていると、何か胸が熱くなる。
剣の煌めき。
加速する踏み込み。
空気すら切り裂くような振る舞い。
それはまるで――
かつて迷宮で跳ね回っていた、“無邪気だったユウト”が、ようやく帰ってきたような気がした。
「ユウト……完全復活、だね」
口に出してそう言った瞬間、
彼がふと振り返って、笑った。
「待たせた」
その笑顔に――私は、不意に胸がいっぱいになった。
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