ダンジョン管理人の息子、実は最強でした

@ryusei_hoshino

第1話 プロローグ

ダンジョンが初めて日本に出現したのは、ユウトが生まれる少し前のことだった。


やがて渋谷、新宿、名古屋、大阪と、大都市圏に次々と“深界孔(ダンジョンホール)”が開き、政府がダンジョン庁を設立した頃には、世界はもう“迷宮と共にある社会”へと姿を変えつつあった。


……


シズカがアップした、ユウトとの初めてのダンジョン潜りのアーカイブ動画は、最初こそ、ほとんど誰にも見向きもされなかった。


「また弱小配信者がなんか上げたな」

そんな感じで、ほんの数十回の再生数。


けれど、ある視聴者がポツリと書き込んだ。


> 「ちょっと待って、これ……やばくね?」


そこからだった。

じわり、じわりと再生数が伸び始めたのは。


「……え、なんで3頭のモンスター一瞬で沈んでんの?」

「いや動きエグすぎワロタ」

「しかも子どもじゃん、誰だよこれ」


コメント欄もざわつき始め、ツイッターや5chでも話題に上がる。

「伝説級の新人見つけた」とか「マオ超える逸材かも」とか――。

バズりとは、こうして静かに始まるものだった。


---


【2回目の配信――開幕前から、異変は起きていた】


2回目の配信の予約枠を立てたとき、シズカは驚いた。


開始30分前の時点で、待機人数が100人を超えていたのだ。


(え、うそでしょ!?)


スマホの画面を何度も擦る。けれど、数字は確かだった。


――ピコン。


チャット欄に、次々と期待のコメントが流れる。


> 「待ってた!」

「はよ謎の少年見せてくれ」

「この前のアーカイブ5回リピったわw」


そして、配信がスタートすると――


爆発するように人数が増えた!


100人、200人、500人……

まるで滝のように、視聴者が押し寄せる。


コメントも止まらない。


> 「きたあああああ!!」

「これ見るために仕事早退してきたw」

「またあのやばい動き見れるのか……!」


シズカは、嬉しさと緊張で心臓が破裂しそうだった。

けれど、横に立つユウトは、相変わらず――


「じゃ、行こっか」


淡々とした声で、軽く小太刀を握り直した。


画面の向こう側で、何百人もの心が一斉にときめいた。


「こいつは――本物だ」


誰もが、そう確信した瞬間だった。

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