第7話

「えっとね―――…」


…ちょっとした…デート、みたいだ…。



「…あ。」

「ん?」

神崎くんが急に立ち止まる。隣を歩く私も止まる。神崎くんのほうへ顔を向けると、まっすぐ前を向いて動かない。私もそのほうへ顔を向ければ、視線の先には落ち着いた雰囲気の喫茶店。

「…入る?」

「え、いや…」

目は、入りたそう…。

「行こ。私、何か飲みたい!」

「…ありがとう。」

神崎くんが少し、照れた。


「ごゆっくりどうぞ~」

店員さんに小さくお辞儀をする神崎くん。私もそれを見て同じようにお辞儀をした。

それを見た神崎くんが小さく笑う。

「ん?」

「あ、いや。七原さん、うちのお店でいつもこうやってくれるんだよ?」

「…え?」

「俺が持って行った時にね、笑顔でお辞儀してくれたんだよ。それが嬉しかったんだ。」

…何だか、恥ずかしい…。

「そういえば、神崎くんは、いつからあそこでバイトしてるの?」

恥ずかしくて、話題を変える。

「高校に入ってすぐだよ。でもあそこ、親戚がオーナーなんだ。だから昔から手伝ってたんだけど、正式に働かせてもらってるんだ。…好きなんだ、あのお店が。ここもね、気になってて…オーナーのおすすめなんだ。」

「そうだったんだ。」

神崎くんがホットコーヒーを口に運ぶ。ブラックが飲めるなんて…大人だ…。

私もそれに続いて、ホットココアを飲む。

「…そういえば、俺に全然気付かなかったよね。七原さん。」

「え、あ!それは…本当に…ごめん!だって神崎くん、雰囲気が全然違うんだもん!」

「そうかな?髪型くらいじゃない?」

「髪型だけじゃないよ。やっぱり格好も違うからかな?大人っぽく見えるもん。」

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