第6話 荒野の銃声、桜嶺の風に響く

陰詠 :「なあイルネス、こんな時間から飲み屋に行くとか危なくないか?」


イルネス :「俺も思う、でも唐揚げ定食がガチでうまいって聞いた」

そんな軽口を交わしながら、イルネスと陰詠は桜嶺の古びた酒場「月下の龍舌蘭(げっかのリュウゼツラン)」の木製ドアを押し開けた。


ギシィィ――…


中は意外にも静かだった。客はまばらで、照明も薄暗く、カウンターには無愛想なマスターがひとり。


だが、奥のテーブル席で、ひときわ異質な空気を放っている少年がひとり。


――黒いテンガロンハットに、赤茶けたロングコート。

ブーツのかかとで床を軽く鳴らしながら、店内の全員を鋭い目つきで見渡していた。


陰詠:「……なーにあれ、厨二病? それとも陽キャが荒野に目覚めた系?」


イルネス:「俺、ちょっと仲良くなれる気がする」


陰詠:「いや仲良くなるな危ないぞそれは」


イルネスが空気も読まずにその少年の前にズカズカと歩み寄る。


「よぉ。イカしてんな。名前は?」


少年はふっと目を細め、口元にマッチをくわえた。火は点けていないが、それだけで妙な威圧感を醸し出す。


「……細川、拓源(たくげん)。この桜嶺で、風を待ってる“流れ者”さ。お前らも、風のにおいを追ってきたか?」


「イルネスだ」


拓源はカチャ、と腰のホルスターに手をかけた。


「この国には“天命の残響”がある。何かを変えたいなら……この銃、手伝ってくれよな」


イルネス:「ちょっと待って、やばいくらい話がかっこよすぎない?」


陰詠:「うわぁ……こいつ、絶対ポエム書いてるタイプ……」


その瞬間、酒場の扉が乱暴に開いた。


拓源が即座に反応し――


パンッ!


乾いた銃声が酒場を切り裂いた。


その少年の正体は、ただの流れ者ではなかった――


陰詠 :「下界の変態が!?どうしてこんなところに!?」


イルネス :「今なら戦える気がする」


イルネスが腰の邪険・「夜」に手をかける


拓源の一撃は、敵の肩をかすめて飛び去った。命中ではない。牽制だ。

カウンターの陰に隠れたマスターが「店の備品壊すなよ……」とぼそっと呟くが、誰も聞いていない。


「チッ……これが、桜嶺の流れ者ってやつか。だが本命は貴様だ、おいそこのガキ!その刀を渡せ。**“邪険・夜”**は、我ら〈闇葬衆〉の回収対象だ!」


黒ずくめの追手が、酒場の中へじりじりと入り込んでくる。全身を覆う漆黒の装束、無表情な仮面、その隙間から漏れる冷たい視線。


陰詠:「わあ、ま~た厄介事呼び込んじゃったねぇ♡」


イルネス:「え、オレ!? いやまぁ、たしかに邪険夜は持ってるけどさ…」


追手の一人がサッと手を振ると、漆黒の鎖が床から生え、イルネスの足首に絡みついた!


イルネス:「わっ、ちょ、これなに!? やばくない!?」


陰詠:「ほらー、そうなると思ったのよ~ん♡ でも…ここで死なれても困るし?」


ヒュン――!


陰詠が腰から取り出した刀を振るう。刃が鎖を断ち切り、イルネスはすんでのところで転がって逃れる。


陰詠 : 「これで頑張ってねー♡」


風のオーラがイルネスに纏う


イルネス :「体が軽い!ありがとう陰詠」


イルネスは立ち上がり、背負っていた黒い刀――邪険・夜を抜いた。


イルネス :「お゛ぉお゛ぉぉッ!?ん゛オ゛ォ゛ほォォ゛ォ゛ッッ!?!?」


イルネスが地面に倒れた


イルネス:「陰詠、、、お前何やった!」


陰詠:「一応強くなる術だけどー追加効果でびくびくしちゃう術だよ♡」


イルネス : 「なんだそのふざけた術は!……てかめっちゃちくび擦れる…」


追手の一人が手裏剣のような光弾を放ってくる。


イルネスはヒュッと身をひねり――避けきれず直撃!


だが、その身体に傷は――ない。


イルネス:「痛った!」


邪険・夜が一瞬だけ、その刃に稲妻のような真紅のオーラが纏う


イルネス:「淫夢之一太刀!刃影・朱鯉!」


ぶん、と軽く振るっただけで、重たい衝撃波が敵の足元から爆ぜた。


追手:「ぐっ……!」


イルネス:「オレに呪いをよこしたイザナミって奴、センスなさすぎっしょ! ぜーんぜんビビってないし!」


敵:「小僧……貴様、天命の加護を……」


そのとき、カウンターの奥から銃声が――


パンッ!


敵の肩を撃ち抜き、吹き飛ばす。


拓源:「……ま、見どころはあるな」


イルネス:「拓源、ナイスタイミング!」


「……今回ばかりは退く。だが“呪い”は確かに始まったぞ……」


男は呪域と共に姿を消した。

静寂が戻る。だが、ただの一歩目に過ぎないことを、誰もが悟っていた。


拓源:「……旅をしてるんだろ、イルネス。なら、次は“風の声”を聞く場所へ行け」


イルネス:「風の声……? どこだそれ?」


拓源:「オウラ・ホミネス。神の街。そして、風の国さ」


陰詠:「……あっち、クラブとネオンと合法ハーブの国だよ?」


イルネス:「ヤバいとこやんけ!」


――そして彼らは旅立つ。

呪いと天命、笑いと闇を背負って。次の国、“風の街”オウラ・ホミネスへ。




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