悪役令嬢と思ったら、大間違いよ。 

❄️冬は つとめて

第1話 廊下で断罪です。

「ジュリエッタ!! お前はメリットに嫉妬し、陰湿に虐めを繰り返していたと言うじゃないか!! 」

長い黒髪を2つに分け三編みにしたジュリエッタは、俯いたまま廊下ですれ違った自分の婚約者に声をかけられた。

それも、大きな声で。


紺のワンピースドレスの制服に飾りっ気はなく、腕に厚い本を抱きかかえたままジュリエッタはその声に振り向いた。


「お前はメリットに対する嫌がらせも、姿と一緒にだな。」

琥珀色の明るい髪をかきあげながら、青い瞳を細めてジュリエッタを見る婚約者のラックス・フォン・ユニリーバ公爵令息。紺の詰め襟の制服には、艶やかな金色のスカーフが飾られていた。


「本当ですわ。教科書を隠されたり靴を隠されたりに辛かったですわ、ラックスさま。」

ジュリエッタの婚約者の隣には、可愛らしい顔をした子爵令嬢のメリット・カオウ子爵令嬢が寄り添う。柔らかな金色の髪と青い瞳は 潤るませながら、ラックス公爵令息を見上げている。


「可哀想に、に辛かったな。」

「はい、ラックスさま。」

ラックスはメリットの肩をそっと抱き寄せた。その肩には、ラックスと同じ色のスカーフが巻かれていた。地味な紺の制服に、男女共にアクセサリーやスカーフで飾るのは当然のようになっていた。


「………あの、ラックス様。わたくしは隠してはおりません。何かの間違えでは? 」

ジュリエッタはおずおずと本を抱きしめながら、ぼそぼそと言った。背を丸めているから前髪が目にたれ、顔を隠すように見える。其れがまたも、彼女を暗く地味にしていた。


「黙れ、ジュリエッタ!! お前以外に誰があんなな虐めをすると言うんだ!! 」

「影でコソコソするなんて、怖すぎますわ。」

地味な事は総て地味なジュリエッタの仕業だと、ラックスは彼女を責め立てた。


「私がラックスさまと親しくしているのが気に入らないのですね。そうでしょう。」

「そうか、やはりな。」

二人は見つめ合いながら頷いた。


「だが仕方がないことだジュリエッタ、お前との婚姻は政略結婚。いくらお前が俺を、俺がお前を愛することはない!! 」

廊下で、大声でジュリエッタを糾弾する。


その声に、教室にいる者も何事かとぞろぞろと出て来た。今や廊下は3人を囲んで溢れんばかりに野次馬でいっぱいになっていた。教室の窓から見ている者もいる。


「俺は『真実の愛』に気づいてしまったのだ!! 」

「ラックスさま。」

ラックスはメリットを見つめ直す。メリットもラックスを潤んだ瞳で見上げた。


「『真実の愛』ですって。」

「『真実の愛』だと。」

ざわざわと、周りの学生達がざわめき立つ。


「二人は愛し合っておられるのね。」

「親が決めた婚約か。」

「まあ、それで虐めを? 」

「高位の者が、下位の者を? 」

「なんて酷いんでしょう。」


ざわざわと口さがなく、周りの学生達が話し出す。そして、


「「「「まるで、のようですわ。」」」」

「「「「正しく、だな。」」」」

ジュリエッタを周りの学生達が、『悪役令嬢』と位置づけてしまった。


「そんな…… 皆さんやめてください、私が悪いんですわ。婚約者のあるラックスさまを、から、ううっ。」

メリットは弱々しくラックスに縋り付いた。


「メリット…… 」

ラックスも優しくメリットを抱き寄せる。悲しそうに俯いた。


「まあ、お可哀そうに。愛し合っている二人を引き裂こうなんて、悪女ですわ。」

「愛し合っているなら、共にいたいだろう。」

冷たい視線がジュリエッタに向けられる。ジュリエッタはぎゅっと、本を抱き締めた。


「泣かないでくれ、メリット。俺は決めた。」

ラックスは顔を上げてジュリエッタを睨みつけた。


「俺 ラックス・フォン・ユニリーバ公爵令息は、ジュリエッタ・フォン・オーガニック公爵令嬢とのする!! 」

メリットの肩を強く抱きしめ、大声で叫んだ。


「そして、『真実の愛』で結ばれたメリット・カオウ子爵令嬢と新たに婚約をすると此処に宣言する!! 」

「「「「オオーーーーー!! 」」」」

周りの学生達が歓喜の声を上げて、二人を祝福した。


ドサッと、ジュリエッタは本を落とした。


「そんな…… そんな…… ラックス様。」

ジュリエッタは黒い瞳から大粒の涙をボロボロと流した。


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