第3話 出発にあたり。

 父と母いわく。

 都内のホテルに併設されている建物が目的地とのことだった。


 さて、移動手段だ。

 開始時刻を考えると、完全に通勤時間帯にぶつかってしまうらしい。

 電車を利用すると、俺も何度か経験しているおぞましき満員電車に押し込められることになるのだ。

 おまけに手にはスーツを持ちながらである。通勤客の邪魔になること必至だ。


 満員電車に乗らなきゃいかんと聞いて、ぶっちゃけ俺は3割ほど行くの諦めようかなと、心がぐらついたね。

 だが、母が電話友達から妙案を授けられたらしい。


「行きはタクシーを使えばいいんじゃない?」


 とのこと。

 タクシー!!


 俺のような引きこもりニートで贅沢などできない身には、まったく思いつかないものだった。

 ちなみに、母も父も思いつかなかった。

 年金生活で苦しいからね、うち。


 父がなにやらタクシーについて弟の自室(現在は父の部屋)で調べ。

 母と俺は待つ。

 父がしばらくして俺たちのまえに顔を出し。

 どうやら事前に予約しておいて、当日の指定時刻に迎えにきてくれるサービスがあることを話す。

 それを利用することに決まった。


* * *


 荷造りをすませて、当日ささっと行動できるようにしておく。

 弟の結婚式まで残り、2日といったところまできていた……


 俺の調子はよくもなく、わるくもなく。

 まあこれなら普通に参加できそうだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る