恋敵
部活帰り、部活が長引いた運動部の声が門辺りでもよく聞こえる。
門をくぐり、前を見ると一人で駅に向かう内海君を見つけた。
一瞬声を掛けようか迷いがあったけど、今日は話す話題があるからかいつもより心が軽く、すぐに隣に向かった。
「内海君!」
声を聞いて振り返る内海君……最高だ。まるでドラマの一部みたい。
「白鳥。どした?」
今日こそは一緒に帰りたい!!お願い声出て来て!!
「き、今日一緒に帰れる?」
「いいよ!」
ぱあっと晴れやかな気持ちになった。今日やっと一緒に帰れる!!
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マジか……白鳥に誘われるなんて思わなかった。超嬉しい。
心臓破裂しそう……!落ち着け、変なことして引かれたくないだろ。せめて周りから白鳥に相応しいと思えるような振る舞いを……!!
てか今日隣の席になれたし一緒に帰るし運良すぎる。
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「体育祭の種目、内海君なら縦割り選抜リレーに出れたと思うんだけど、なんで出なかったの?」
縦割り選抜リレーとは、一番足の速い人たちがクラスに男女1人ずつ選ばれ、3学年合同でするクラス対抗リレーのこと。
私たち4組は男子で内海君、女子で三輪さんが選ばれる予定だったんだけど、内海くんは辞退して男子は別の人になった。
「んー色々あるけど……体育祭の実行委員で忙しいからかな」
「そういえば朝呼び出されてたね」
「そうそう。朝はボーっとしてんのに急に呼び出されて心臓が……」
ハァーーと大きなため息を吐く内海君の隣で、私は小さく笑っていた。
「白鳥は女子リレーアンカーだろ?」
「うん」
知ってたんだ……。(内心嬉しい)
「すげぇな。お互い頑張ろうぜ」
そう言うと笑顔で右手の拳こちらに向けてきた。
これは……グータッチ⁈
超自然な誘い。
あ、笑顔可愛い。じゃなくて!これは逃したくない!!私も自然に、自然に……
左手を出そうとした。その瞬間、内海君と私の間に何かが押してきた。
内海君の拳は崩れて、私の左手も引っ込んでしまう。
あ……折角のチャンスが。
「晴怜くーん!」
押された方向から声がして、見てみると長い黒髪が見えた。
スタイル良くて足が細い。髪さらさらで目が大きくて可愛い。あれ、こんなに制服のスカート短かったっけ?そんなことは置いといて、
この子は……
「望月……?」
そうだ、望月花蓮さんだ。
確かSNS、特に
でも、そんな人がなんで此処に?
「あ、あの……?」
「ん?えっ居たの⁈ごめん見えてなかった!」
いや見えるでしょ。明らかに嘘つかれてる……。
「それよりさ!晴怜君今から帰るんでしょ?一緒に帰ろーよ!」
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「は?」
白鳥居るの知ってて言ってんのか?
こんな可愛い子が見えてないのも目悪すぎだろ。頭おかしいのか?望月なら他にも帰れる男居るしわざわざ俺のとこ来んな。
俺は今から白鳥と帰るんだよ!!駅言って電車乗って隣で立つか座るかしながらなんか話して家まで一緒に帰りたいんだ!!キモいな。けどキモくて良い。キモくて良いから一緒に帰らせてくれ。レアイベントだから!
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な、なんか内海君の顔が強張ってる……。も、もしかして私邪魔なタイプ?内海君は望月さんと帰りたいのかな。
「あ、私邪魔なら先帰るよ?」
望月さんと帰れることなんか中々ないし、みんな望月さんと帰りたいと思ってる……はず。だから内海君もそうなのかもしれない。
「だって晴怜君!一緒に帰ろ!」
そう言って望月さんは内海君の腕にしがみついた。
ズキッ……
胸が締め付けられるような感覚になった。
まさかだけど……望月さんって内海君のことが好きなの……?
だったら……勝ち目ないな。
「じ、じゃあね」
私はできるだけ明るい声で言った。この気持ちが二人に気付かれないように。
今日も、内海君と帰れないなぁ。また、話しかけたら良いだけだよね。そうだ。今日限定ってわけじゃないし。でもやっぱり、今日は何故か、いつもより内海君と帰りたかった。そうだ多分、今日の朝に仲良しそうなカップルを見たからかな。
『明日忙しいのにごめんね』
『良いんだよ。仕事も大事だけど、仕事よりもサナの方が大事だし。会いたかったし』
『も~嬉しい!ありがとう!』
二人の笑顔が、毎日がすごく楽しいことを表していた。
ふと思った。
話が盛り上がらなくたって、静かでも良いから、帰り道に好きな人が隣に居るのって、どんな感じなんだろうって。緊張するのか、楽しいのか、それとも他にも何かを感じるのか。
内海君を越して一歩前に進む。その時だった。
「待って!」
内海君が私の腕を握っていた。
離れないくらい力強くいけど、痛くない。
私を止めた後、隣に立って肩に手を回した。
「望月、悪いけど今日は白鳥と帰るから」
心臓の音がうるさい。ドキドキしている。顔が熱くなる。
内海君が肩を……。か、顔赤くなってないかな。心臓の音、バレてないかな。
「なーんだ!約束してるなら言ってよね!もう!」
望月さんは私の横を通って歩いた。
「晴怜君、次は一緒に帰ろーね!」
明るくて可愛い声。でも、私は見えてしまった。
横を通る瞬間の望月さんの顔が、酷く軽蔑や憎悪などの、私を敵視するように睨んでいたことを。
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帰りの電車、仕事や学校から帰る大人や学生が多く、電車の中は満員ってわけではないけど、席は空いていなかったから立つことにした。
「なぁ、さっき……肩勝手に触ってごめん」
白鳥にとっては不愉快だったかもしれない行動を、軽くやってしまった。望月の身勝手な行動に腹が立って、気が付けば腕が白鳥の肩に回っていた。
「全然大丈夫だよっ⁈気にしないで!」
白鳥は慌てて返す。
その仕草が、すごく可愛い。思わずにやけてしまいそうだけど、そうなるとキモイと思われるだろうから我慢。
「あのさ、もし白鳥が良かったらでいいんだけど、」
首を傾げる。それも愛おしい。他の奴と帰る姿を想像すると、どうしてもやめてほしいと思ってしまう。俺、独占欲強いのかな。
「これからも、一緒に帰らない?」
心臓のバクバクがやばい。ちゃんと声出てたか?変に思われないか?
俺だけの好意なら、白鳥に迷惑___
「うん!帰る!」
っ……やっぱり好きだなぁ。
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内海君の顔が赤い⁈返事間違えちゃった?熱?ど、どうしよう……
「大丈夫?顔、赤いけど……」
「だ、大丈夫!!何ともない」
内海君、手で顔隠しちゃった。
もうちょっとだけ、見ていたかったな。
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