第5話 放課後は恋人デート

「見て! あのカップルヤバくない?」

「うわぁー! 彼女さん。モデル見たいに可愛い


「おい。あの娘、メチャクチャ可愛いないか? 声かけて見ようぜ」

「アホ。隣見てみろよ。彼氏さんが入るだろうが…」



「私達。かなり注目されちゃってる感じ?」

「さぁー、どうだろうか。俺はともかく小鳥遊たかなしさんは遠目で見てもかなり目立つから、皆。自然と君に目が行くんだと思うよ」

「えー、そんな事ないよ。桐生君だってこんなにカッコ良くて背も高いんだから。私と同じ位目立つと思うんだけどなぁ」


 私と同じ位か。凄い自身だな……まあ、この娘は確かに飛鳥学園でも凪と双璧を成す、美少女だもんな。

 

 俺の周りに居る親友の彼女達も、かなりの美少女達ではあるが……この娘はそれにプラスしてだ。


「んー? どうしたの? 桐生君。もしかして私に見惚みとれてちゃったのかな?」

「いや。そんなわけないだろう。多分……」

「えー、何それ? ひどなぁー、もー」


 思春期男子を1発で口説き落としてしまう天使の様な微笑み。

 

 そう! この最強の愛嬌あいきょうが彼女の一番の魅力だ。


 しかし、俺は気づいてしまった。あの昼休みの色んな意味での公開処刑で、彼女の本性を───


「ん? 放課後デート楽しみだね? 彼氏君」

「ハハハ。そうだね。小鳥遊さん」


 彼女はかなりの腹黒で猫かぶりなのだと。

 

 俺は常に腹黒い悪友達と日々を過ごしているので、人の腹黒さにはかなり敏感なんだ。


 なんせ、負ければ何かしら重い罰ゲームを毎回、課して来るアホの悪友達と過ごせしているのだ。

 そんな奴等をどう罠にはめるかを日常的に考えていれば、人の本質を見にくのも得意になっていき敏感になるんだよな。


 そして、その敏感パラメーターの針がアウト側へと振り切っているのがこの小鳥遊 柊さんなんだが。


 不味い。これ、この娘の術中にピタゴラススイッチしてないか? 明らかに既成事実を外側から埋められている様で仕方ないんだが? 


「あー、マスドの限定フラペチーノだって。美味しそう! 桐生君。マスド寄ってこうよ。マスドー」


 小鳥遊さんは、猫なで声で俺の右腕に自分の体をり寄せて来た。


 クソオォォ!! 可愛すぎんだろうー! なんだこの可愛さ。これで落ちない男子高校生っているのか?


 いや、入るなここに1人。俺なんだけどな。


「そうだね、行こうか。マスド、小鳥遊さんの為にね」

「あれ? 可笑しいなぁ? 昼間と違って反応薄くないかな?」


 俺は最愛の幼馴染み。なぎ一筋なんだ。だから凪以外への恋愛感情など不要────


「いらっしゃいませ~、てっ桐生君じゃん。そんでお隣は小鳥遊さん? 不味……」


 店内に入店すると店員さんが元気に挨拶をして来たと思ったら、この娘は同級生であり。俺の悪友の1人、まことの彼女、アスナがマスドの制服を着て俺達の前にいた。


「こんにちは~、筒井さん」

 満面の笑顔で小鳥遊さんがアスナに手を振っている。


「よう! アスナ。何が不味いんだ? 俺達はちゃんと客として来たんだぞ。別に変な事なんて何も……」

「アホ。その意味での不味いじゃんないわ。桐生君。今、この店にはアンタの幼馴染みが……」

「俺の幼馴染み? 凪がどうかしたのか?」

「アスナー、追加注文お願い。ダブルホットケーキのメガ盛り追加だから! 急いで作って……てっ! 士郎?」

「凪? お前、ここで何やってんだ?」

「いや、アスナに臨時でバイトを頼まれただけなんだと……何でアンタとヒーちゃんがマスドに一緒に居るわけ?」


 そこにはマスドの制服姿をした凪がトレーを持って現れた。そして、良く見ると窓際の席にはナツと竜胆達の姿が……ていうか。こっちに気づいて、2人とものほほんと手を振っている。


「フフフ、それはね。ナーちゃん。桐生君は今、私と放課後デートの真っ最中だからなの」

「な、何ですってえぇぇ!!」

ゴロゴロ──ピシャアー!!


 おい。何だ今の? 効果音みたいな雷が一瞬起きたような。いや、今はそんな事を考えている場合じゃない!


 凪が謎かフリーズして動かなくなってしまった。


「マスドで飛鳥学園が誇る二大美少女が鉢合わせ。アンタ。まんまと小鳥遊さんにはめられたわね。桐生君」


 アスナがいつの間にか俺の隣に来て、そんな事を告げる。


「は? はめられた? 誰に?」

「小鳥遊さんに決まってんでしょうが。昼休みの時もあんな食堂から見える位置に座ってたしさあ……本当、凪に対してライバル意識が高いね。昔から」

「小鳥遊さんが凪にライバル意識? そんな話聞いたことないぞ」

「ヒーは昔からそう…あっ! ヤベ、人前でヒーって呼ぶとキレるんだった。小鳥遊さんは昔からそうよ。凪に対抗意識ありまくりで、いつもN・T・Rする妄想にふけっているの。アホの子よね。まあ、凪も負けず劣らずのアホな行動をするけどね」


 アスナは小鳥遊さんと凪を両方指差して笑い始めた。


「「誰がアホの子達よ」」


 それに反応してアホの子達はアスナに詰めより、怒り始めた。


 何だ? この2人、意外と仲が良いのか? 確かお互い親友同士なんだよな? 昔からの。


「はいはい。お客様は早く注文して下さい」

「ヒァー! アーちゃん。頬を引っ張るのを止めなさい!」

「臨時のバイトちゃんは確り働け」

「ヒファイ! 頬っぺたちぎれちゃうからー!」


 おお! 流石、姉御肌のアスナさん。相手が二大美少女だろうと容赦なく、両者の頬っぺたに制裁を加えるぜえ!


「そして、アンタは私等からの取り調べがあるから、注文終わり次第。竜胆達の所に逃げずに行きな。アホの桐生君」

「は? 何で俺が竜胆達の所に……痛たた!! 分かった。行くから頬っぺたをつねるな」

「ふん! 分かれば良いのよ」

「ほら。凪もそろそろ。臨時のバイト終わりなんだから、制服に着替えてナツの所に行った。行った」

「う、うん。分かったよ。アスナ」


 アスナに言われ、凪は店の奥。スタッフルームへと入って行った。

 そうして俺はアスナの拘束から解放され、注文を終えると。1人で竜胆達が居る窓際のテーブルへと向かった。


「ちょっと! アーちゃん何をするの……ヒァーハハ……また頬っぺたつねった!」

「ヒー、アンタ。やり過ぎ。これから皆、揃って今回の間違った告白の件を話し合うから覚悟しときなよ」

「へ? 間違った告白の件? 何の事……ヒャハハ! 分かってます。分かってるから頬っぺたから手を離してぇ!」

「たくっ! この小悪魔は凪の事になると容赦なくなるんだから」

「仕方ないでしょう。今回は桐生君が絡んでるだから」

「桐生君ねえ。凪もそうだけど。何であんな鈍感男に夢中になるのか分からな…」

「私の前で桐生君の悪口は止めてくれる!……はっ! ご、ごめんなしゃい」

「……! ヒーのその反応。へー、今回は本気何だ? 以外だね。私はてっきり男避けかと思ってたんだけど。その反応を見ると考えも変わってくるかな」

「何の事? 私はただN・T・Rのシチュが好きなだけで……」

「分かった。分かった。なら、凪から奪ってみなよ。アンタの運命の王子様をさ。(まぁ、私は凪を応援するんだけどね)」


 アスナは小鳥遊さんに何かを伝えて、彼女の背中をおもいっきり叩いった。


「痛い?! ウワプッ! アーちゃん……酷いよ」


 そして、小鳥遊さんは何故か体勢を崩して転びそうになっていた。あわあわしている……そんなおっちょこちょいな姿も可愛いらしいと思ってしまった。

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