第3話 小鳥遊 柊さんは天使と小悪魔なのかもしれない

小鳥遊たかなし ひいらぎ小学生頃》


「し、士郎君。あ、あのちょっと。お話があるんだけど…」

「ん? 君は確か隣のクラスの彩希あきさんだよね」



「あぁ、また。士郎と知らない女の子がお喋りしてる」


「……相変わらずモテますなぁ。飛鳥小学校の王子様は」


「そんなに心配なら早く告白すれば良いんじゃない? 桐生君。結構、他の学校でも有名人だから。さっさと告白しないとN・T・Rされるわよ 」


「ヒーちゃんのそのN・T・Rが良く分からないけど……まだ大丈夫。まだね。士郎は昔からかなり鈍感だから。女の子何かと付き合う筈なんてありえないわよ。ねえ? ナツ


「……んー? 時間の問題的な」


「へ? 何、その曖昧な答えはさぁ。否定してよぉ。ありえないってさぁ~」


 そう。夏希の曖昧な答え通りだと私は思ったわ。

 ナーちゃんの……凪の幼馴染み。桐生 士郎君。あの子はモテるもの。


 容姿端麗、文武両道、質実剛健しつじつごうけん、それをナーちゃんの幼馴染みの桐生君は備えている。


 私は彼がそんな凄い人になるまでの努力を知っている。影ながら彼の努力を見てきたもの。


 だから。私もナーちゃんが親友じゃなかったら。狙ってたかもだけだ……私は親友の恋を邪魔をしたくない。まあ、彼からもしも告白してきたのなら話しは変わるかもしれないけど───



《お昼休み 飛鳥学園中庭》


「桐生君。はい! あ~ん!」

「……いやいや。あ~ん! じゃないだが。こんな大っぴらの場で何をしてるんだ? 小鳥遊たかなしさん」

「え? 私が朝、早く起きて作った手作り弁当を彼氏君に食べさせてあげているんだけど? 何かへんかね?」


 天使みたいな超可愛い笑顔で「何かへんかね?」じゃねえよ?


 可愛い過ぎんだろう。この娘!!


「へー、夏希の手違いで告白相手を間違えてそのままゴールインねぇ」

「そして、凪ちゃんは暴食に走って現在、食堂で焼け食いしてるって、竜胆から連絡来たね」

「……全ては神の思し召し。私は何も悪くない。私は何も悪くないので……キュウゥ?!」


 俺はナツの顔面を掴むとアイアンクローで空中に宙吊りにした。


「どの口が言うんだ? ナツ? これか? この後口が全ての元凶か? あぁん?!」

「……じ、二郎。ぐ、グルヂイ」

「ああ、そうかい。それと俺の名前は士郎だ。つうかお前等。何でここに居るんだよ! 彼氏と彼女はどうした? リア充共」


「お前の勘違いの告白のせいで、落ち込んだ凪ちゃんのケアーに当たっているんだが?」

「そうそう。士郎君のアホの尻拭いを竜胆はしているんだよ」

「……うんうん。そうです。私は何も悪くな……キュウゥ?!」


 俺は再び、夏の顔面を掴むとアイアンクローを容赦なく喰らわせた。 

 どうして親友アホ共がここに同席しているのかは。この際、気にしない。


 俺の真の目的は、俺の隣でニコニコと笑っている天使…じゃなくて、小鳥遊たかなしさんに昨日の告白は間違いだったと伝える為に、この場所に来てもらったんだ。


「とういう訳で昨日の放課後の告白は、夏希が君に間違って連絡してしまってさあ。ほら。ナツ。お前も弁明しろ」

「……ゴ、ゴベンナザイ……柊」


 うん。素直に謝れてよろしい。これも俺が夏を掴んでいる右手の力を強めた結果だな。


「…………」


 そして、相変わらず。小鳥遊さんは天使スマイルで俺達のやり取りをジーッと見つめている。


「だから。小鳥遊さんには悪いんだけど。君とはこのまま別れるって方向で──」

「ううん。絶対に別れないから」

「は?……今なんて……」


 小鳥遊さんはニコニコ笑顔でそう告げた。


「だから絶対に別れないって言ったんだけど?」


「いやいや。このアホ共とのやり取りを聞いてただろう。申し訳ないけど俺は間違って君に告白しちゃったんだ。本当に人間としてクズみたいな行動だったと思ってる。本当にごめん。それに君と俺とじゃ全然釣り合わな……」


「女の子に人気な《飛鳥学園の王子様》」


「は? 何をいきなり」


「桐生 士郎君の事だよ。そんな君が自分から告白して来て、別れたがる女の子がいると思っているのかな?」


「い、いや、俺が好きなのはな……んぐ?!」


 小鳥遊さんは俺の唇を右手の薬指で抑えるとクスッと笑った。


「逃がさないよ。やっと巡って来たチャンスだもん。絶対に物にするよ。この気持ちはね。相手があのナーちゃんでもね、だから覚悟してね。私に告白してくれた。恋人の桐生 士郎君」


 彼女はそう言って、小悪魔の様に微笑んだ。


 もしかするとこの小鳥遊 柊と言う娘は見た目は天使。中身は小悪魔というと恐ろしい女の子なんだと。俺はやっと気づいたのだった。


 とか心の中で思っても。もうかなり手遅れだけどな。くそおぉ!! これからどうなるんだ? この間違った告白の行く末はよおぉぉ!!





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