第17話

《夜の帰り道》


「今日の試合、ギリギリだったな……」


陽斗が言いながら、コンビニの袋を揺らす。

玲央は缶コーヒーを片手に、夜風を浴びながら歩いていた。


「CrossOver……正直、負けたと思った」

「っすね。でも、玲央が囮になってくれたから、俺も動けた」


未来は缶ジュースを抱えて、玲央の隣を歩いていた。


「玲央くん、すごく冷静だった。……昔は、もっと怒ってたのに」


玲央はふっと笑った。


「成長した……ってやつかもな」



《玲央の部屋》


帰宅後、玲央はPCモニターを見つめながら、1人ゲームのリプレイを再生していた。

自分の動き、未来のヒールの位置、陽斗の射線……すべてが絶妙に噛み合った“あの瞬間”。


だがその裏には、わずかな遅れや、隙が存在していた。


「……これじゃ、上には行けない」


玲央の指がマウスを止めた。

ディスプレイに映るのは、過去の“プロ時代”の自分――華やかで、完璧で、誰にも負ける気がしなかった頃のプレイ。


(……あの頃の俺は、どこに行った?)


玲央の中に、焦りと期待が交差していた。



《未来からのメッセージ》


その夜、玲央のスマホが鳴った。

未来からのショートメッセージだった。


『玲央くん、私たち強くなってるよね。』

『でも、もっと上に行きたい。玲央くんと一緒に。』

『だから――また教えてほしい。昔のことも、これからのことも。』


玲央は少しだけ驚いて、そして笑った。


「……あいつ、ほんとに強くなったな」



《そして、新たな試練へ》


Storm Challengeもいよいよ中盤に差し掛かる。

次の相手は“Absolute Six”――前大会ベスト4の常連。


実力差は歴然。チーム力も個人スキルも、トップレベル。

玲央たちは、試合前に練習会を重ねる。


「今までの戦い方じゃ、通用しないっすよね」

「うん……リスクを負ってでも、攻めなきゃ」


玲央は冷静に、だが強く言った。


「――一か八かの“選択”が必要だ」



【特訓シーン:深夜のスクランブル】


未来はサポートの射程と回復速度を徹底的に鍛え、

陽斗は反応速度と回避ルートの選択肢を増やしていく。


玲央自身も、コンボの精度を高め、使用キャラの新技を習得した。


「“蒼閃の牙”……タイミングがシビアだが、使いこなせば一撃必殺だ」


彼の瞳に、かつてのプロとしての“光”が戻っていく。



《試合当日・開幕》


実況が高らかに叫ぶ。


「さあ! 本日最後のマッチは、注目の新鋭チーム“Vanish” vs 王者候補“Absolute Six”の対戦です!」


「勝てるかどうかじゃない。超えられるかどうかだ」


玲央はマイクに手を添え、静かに言った。


「行こう――“限界の、その先へ”」

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