第28章:喪失の克服
悠真もまた、姉の事故との最終的な和解に向き合っていた。アートフェアでの成功と美月との時間は、彼の心に希望を灯したが、喪失感はまだ小さな影を落としていた。湖畔でのプロジェクトは、彼にとって姉の記憶を昇華する最後の機会だった。
ある日、悠真は美月を連れ、湖畔の奥にある小さな森へ行った。そこは、彼が姉と子供時代に訪れた場所だった。
「ここ、姉貴とよく来てたんだ。湖の光見て、将来のこと、いろんな話した」
悠真はカメラを手に、森の木漏れ日を撮りながら語った。美月はスケッチブックを開き、湖と森の情景を描いた。
「悠真、姉さんのこと、どんな風に覚えてたい?」
美月の質問に、悠真は少し考え、答えた。
「姉貴は、いつも笑ってた。俺に、写真撮れよ、って背中押してくれた人。事故のことは、痛いけど、姉貴の笑顔を、ずっと心に残したい」
美月は頷き、こう言った。
「じゃあ、その笑顔、君の写真で残そう。姉さんが愛した湖、君が愛する光で」
悠真はカメラを構え、湖の光を撮った。シャッター音が響くたび、姉の記憶が彼の心の中で穏やかに溶けていく気がした。彼は一枚の写真を取り出し、美月に見せた。それは、姉が湖畔で笑う姿を収めたものだった。
「この写真、姉貴の最後の笑顔なんだ。プロジェクトで、使おうと思う。事故の写真じゃなく、姉貴の生きてた瞬間を」
美月の目には涙が浮かんだ。
「悠真、それ、絶対、姉さん、喜ぶよ。君の写真、愛の証だね」
悠真は彼女を抱きしめ、囁いた。
「美月、君のおかげで、姉貴をちゃんと送り出せた。ありがとう」
その夜、二人は湖畔のキャンプ場で焚き火を囲んだ。星空の下、悠真は姉の思い出を語り、美月は母との和解を話した。互いの傷を共有することで、二人の心は完全に繋がった。
「美月、俺、君と一緒に、どんな未来でも描ける気がする」
悠真の言葉に、美月は笑顔で答えた。
「うん、君の瞳に映るわたしなら、どんな夢でも叶えられるよ」
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