第7章:東京の光と影

湖畔の旅行から戻った美月は、東京での日常に戻った。だが、心の中は湖の静けさと、悠真との時間で満ちていた。悠真とのLINEはほぼ毎日続き、仕事の合間に送られてくる彼の写真やメッセージが、美月の生活に彩りを加えた。


ある日、悠真から「次の写真展で、君のイラストとコラボしない?」と提案された。テーマは「光と影」


悠真の写真と美月のイラストを組み合わせた展示を、渋谷のギャラリーで開催するという。


「わたしでいいの? もっと上手い人、いるよね……」


美月はいつもの癖で自分を下げたが、悠真は電話越しに笑った。


「美月の絵だからいいんだよ。君の光と影、俺、めっちゃ見てみたい」


その言葉に、美月は胸が熱くなった。


「うん、やってみる。頑張るよ」


コラボの準備は、予想以上に楽しかった。


悠真のスタジオで、彼の写真を見ながらイラストの構想を練る。悠真は美月のラフスケッチに目を輝かせ、彼女のアイデアに熱心に耳を傾けた。


「このイラスト、めっちゃいいね。光が柔らかくて、でも影に力がある」


悠真の褒め言葉に、美月は照れながらも自信が湧いてきた。


だが、準備が進む中、遥が再び現れた。


彼女はギャラリーのキュレーターとして、展示の企画に関わることになったのだ。


初回の打ち合わせで、遥は美月のイラストを一瞥し、こう言った。


「佐倉さんの絵、悪くないけど、もう少しインパクトが欲しいわね。悠真の写真に負けないようにしないと」


その言葉は、美月の心に突き刺さった。


彼女は笑顔で「はい、頑張ります」と答えたが、内心では不安が膨らんだ。


わたし、ほんとに悠真の隣にいていいのかな……?


打ち合わせ後、悠真が美月をカフェに誘った。


「遥の言葉、気にするなよ。あいつ、昔からああいう言い方なんだ」


「うん、大丈夫。慣れてるから」


美月は笑ってみせたが、悠真は彼女の手を握り、真剣な目で言った。


「美月、君の絵は俺にとって特別だ。誰とも比べなくていい」


その言葉に、美月の目が潤んだ。


悠真の瞳に映る自分は、いつもより少しだけ強い人間に見えた。


その夜、美月はアパートでスケッチブックを開いた。悠真の写真にインスパイアされ、光と影をテーマにしたイラストを描き始めた。


湖の光、悠真の笑顔、遥の冷たい視線。


すべてが彼女の線に溶け込んでいった。

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