第8話
模擬戦が終わった後、悠真は王城の一室でぐったりと座り込んでいた。
戦いたくないのに勝手に勝利扱いされ、さらに「白銀の盾」へのスカウトまで受けるという地獄のような展開。
そんな彼の前に、ルミエールとルシアが現れた。
「救世主様、お疲れ様でした!」
ルミエールは満面の笑みで言う。
「いや、疲れたどころじゃないんだけど……」
悠真がぼやくと、ルミエールはくすくすと笑った。
「それにしても、ルシアったらすごく真剣でしたね。まるで悠真様に惚れているみたいでしたよ?」
「なっ……!!!」
ルシアの顔が一瞬で真っ赤になった。
「そ、そんなことはありません!私はただ、模擬戦を全力で――」
「でも、模擬戦の後ずっと悠真様のことを見てましたよね?」
ルミエールは悪戯っぽい笑みを浮かべながら、ルシアをじっと見つめる。
「そ、それは……!」
ルシアは言葉に詰まり、視線を逸らした。
悠真はそのやり取りを見ながら、頭を抱えた。
「いや、俺を巻き込むなって……」
だが、ルミエールはさらに追い打ちをかける。
「ルシア、素直になったらどうですか?私、応援しますよ!」
「応援って……!」
ルシアはさらに動揺し、手を振り回した。
「そ、そんなことを言われても……私は……!」
その様子を見ていたルミエールは、ふと真剣な表情になり、悠真の方を向いた。
「でも、悠真様は私の救世主様ですからね」
「え?」
ルミエールはにっこりと微笑みながら、はっきりと言った。
「ルシアを応援しますけど、悠真様を渡すつもりはありません!」
「なっ……!?」
今度は悠真が驚き、ルシアはさらに顔を赤くした。
「ちょっと待って!俺、そんな話に巻き込まれるつもりないんだけど!?」
「巻き込まれるのが悠真様の運命ですから♡」
ルミエールは楽しそうに笑いながら、ルシアの肩をポンと叩いた。
「さあ、ルシア。頑張ってくださいね!」
「……っ!」
ルシアは何も言えず、ただ俯いてしまった。
悠真は頭を抱えながら、心の中で叫んだ。
**「なんで俺の人生は、こうなるんだぁぁぁ!!!」**
**第13章「夜の中庭とツンデレ創世神の記憶」**
悠真は城の中庭に立っていた。
夜空には満天の星が輝き、静寂が広がっている。
だが、その美しい景色を楽しむ余裕など、彼にはなかった。
「……なんで俺、こんなことになってるんだろう」
悠真は深いため息をつきながら、転生前の生活を思い返していた。
---
**過去――ブラック企業の社畜生活**
「高城、これ今日中に終わらせておけよ」
「え、でもこれ、明日までの締め切りじゃ……」
「いいからやれ。お前ならできるだろ」
悠真はデスクに座りながら、上司の無茶振りに耐えていた。
毎日毎日、終わらない仕事。
誰も助けてくれない。
それどころか、周囲は彼に期待してばかりだった。
「高城君、これもお願いね!」
「君ならできるでしょ!」
その結果――彼は心をすり減らし、ただ生きるだけの日々を送るようになった。
「……もう、こんな人生は嫌だ」
そう思った矢先、彼は異世界へ転生してしまった。
---
悠真は王城の広間で騎士団長の前に立たされていた。
周囲には白銀の盾騎士団の精鋭たちが並び、緊張感が漂っている。
「救世主様の剣技は、我が騎士団に必要不可欠だ」
「だから違う!!偶然当たっただけなの!!!」
悠真の必死の抗議も虚しく、騎士団長は悠真の才能を確信していたらしい。
さらに――
「王女ルミエール様のご命令により、入団試験を受けていただきます!」
「ちょっと待てぇぇぇ!!俺の意思はどこ行った!?」
悠真は頭を抱えた。
なぜか王女ルミエールがニコニコしながら傍で見守っている。
「ふふ、悠真様が騎士団に入れば、ますます王国が安定しますね♡」
「いやだから俺、戦う気ないんだって!!!」
だが騎士団長が厳かな声で言い放つ。
「安心しろ。試験は単純だ。団員たちと簡単な実戦を行い、その適性を見極めるだけだ」
「実戦!?いやいやいやいや!!」
「そして、対戦相手は――」
そこで騎士団長は指を差した。
悠真が目を向けると、そこにいたのは――
**騎士・ルシア。**
「……!!」
ルシアは顔を赤くしながら、そっと剣を握る。
悠真はゾッとした。
(やばい、さっきの模擬戦で事故勝利しちゃったせいで、ルシアにとって俺はもう強敵扱いされてるんじゃ……!?)
そして――
「お手合わせ願います、救世主様」
悠真は絶望の底に叩き落された。
**終わった――!!!**
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