毎日家に来るギャルが距離感ゼロでも甘くない
らいと
物理攻撃属性のヒロインです
出る杭は打たれる。しかし彼女は杭を打つ相手を逆に叩きのめす。
「――ねぇ、ちょっと。あんたさ、もうちょい先輩を敬うとかできないわけ?」
「あ? んだお前ら」
本校舎西の階段踊り場。3年の先輩に絡まれる満天。
そんな彼女の隣で、同じクラスに所属する
相手は元バレー部所属の女子生徒たちで、身長170センチ越えの満天を前にしても引けを取らないほどの高身長。リーダー格と思しき女子生徒に至っては、おそらく太一と同じかそれ以上に身長がある。如何にもクラス内で幅を利かせていそうな見た目と態度。おそらくこれだけの威圧感なら男子相手にも物怖じしないだろう。
しかし、そんな相手に凄まれても、満天は面倒くさそうに瞳を眇めるだけで臆した様子は微塵もない。
そんな後輩の態度が気に入らないのか、相手の女子生徒は眉根を寄せて満天に詰め寄った。
「この前の体育祭……随分と派手にウチらのことコケにしてくれたじゃん?」
「コケ? ……ああ、あんたらどっかで見たカオだと思ったら、こないだウチらに決勝で敗けたパイセンじゃん」
「「「っ!」」」
あけすけに言われて先輩女子の顔面に鬼が宿る。
しかし満天はそれでも態度を変えず、むしろ相手を小馬鹿にするような笑みを浮かべて言い放つ。
「ダッサ。なんすか? 後輩の、しかも運動部でもない奴に負かされて八つ当たりっすか?」
「っ! あんた!」
「悪いんすけどダル絡みウザイんで消えてもらっていいすか?」
「ちょっ、ちょっと満天さん」
先輩女子のこめかみがバーストしそうなほどピックピクしてらっしゃる。
マジで手が出る5秒前。先輩としての尊厳も威厳もなにもかも顧みない満天の態度に、先輩女子たちの拳がわなわなと震えていた。今頃彼女たちの内心は真っ赤に炎がラフレシアのごとく強烈に咲き誇っていることだろう。
高校生にとって1年という生まれの差は非常にデカい。学年の違いはそのままヒエラルキーの違いでもある。
後輩は先輩を敬うモノ……などという不文律というか暗黙の了解というか、とにかくそういう空気感が学校という空間にはあり、それを侵すような存在は粛清されることになる。
そして、彼女たちは今、満天という不届きな侵犯者に対して裁きを下そうと、独善塗れの手を伸ばし、
「あんまし調子に乗んなよドブス!」
満天の胸倉を掴んで引っ
が、満天相手にその行為は悪手中の悪手である。
もう一度繰り返す。
出る杭は打たれる。しかし彼女は杭を打つ相手を逆に叩きのめす。
それも徹底的に。敵対してくる相手に容赦せず、一度噛み付いたら離さない。
先輩女子の手が満天の頬を捉え、乾いた音が踊り場に響く……ことはなかった。
「は?」
先輩女子が打ち据えるはずだった満天の代わりに、その間に強引に割り込んだ太一がその腕に彼女の一撃を受けていた。
「っ!? 太一!」
満天が珍しく動揺した声を上げた。
「だ、大丈夫です」
とは言ったものの、さすがにバレーで鍛えているだけあり、平手打ちでもジンジンと痺れるような感覚が制服の上から伝わってきた。
「あ、あの……それはさすがにやりすぎ、と言いますか」
満天のことしか目に入っていなかったのか、急に現れた男子生徒に先輩女子たちの顔が顰められる。
「なにあんた……関係ないのがいきなり出てくるとかウザいんだけど」
「いえ、関係ないとは言えないと言いますか…………いえ、やっぱりあんまり関係ないかもしれません」
「あ? ちょっとあんたなに言ってんのか分かんな……ひぃっ!」
先輩女子が思わず飛び退いた。まじまじと太一と顔を合わせた直後のことである。
なんと失礼な態度だろう。
太一は緊張に強張る表情筋に力を入れて、ひくひくと口角を無理やり持ち上げる。
場を取り繕うために浮かべた愛想笑い。
しかしそれがもたらすのは平穏でも安堵でもましてや笑顔でさえない。
先輩女子の目に映る太一の顔。特に際立つひとつのパーツ。
それは目元……ギンと上に釣り上がり、黒目が小さい三白眼。
緊張に眉根が寄ったそれは、どんなナイフよりもなお鋭く、ハッキリ言ってシャレにならないレベル。
太一にそのつもりはなかろうと、その目つきの悪さに睨まれた相手は咄嗟に臨戦態勢に入り、生物としての恐怖を呼び覚まされる。
先程まで威勢よく満天に絡んでいた先輩女子が、太一の強烈な眼光……眼光だけ……を前に震えあがっている。
「な、なによあんた……そ、その子の、知り合いかなんかなわけ?」
声からも覇気が奪われている。
愛想笑いを浮かべる太一の顔はもはや犯罪者のそれでしかなく、人数で上回っているはずの先輩女子たちはジリジリと距離を取っていた。
「えっと、同じクラスの……友達、です」
「ピクッ」
「へ、へぇ……そう。で、でも、だからってウチらの邪魔、しないでもらえる、かな?」
必死に先輩としての威厳を守ろうと表情を取り繕う先輩。
しかしその声は確実に震えており、ついでに体も小さくバイブレーションしていた。
相手の態度から、太一は先輩たちが自分にどんな感情を持ったかをすぐに理解した。
……またか~。
もはやこれで何度目だろう。
この目つきに『なって』からもうすぐ5ヶ月。いい加減この反応にも慣れたと思ったが、あからさまに怯えられるとそれはそれで心に来るモノがある。
とはいえ、今この状況においては太一の凶悪な顔面がうまいこと場を収めてくれそうな予感がした。
「おい。ちょっと退け……」
が、不意に背後から声を掛けられる。
それと同時に、満天は太一を押しのけて先輩たちの前にゆらりと歩み寄る。
「てめぇ……今、こいつのことぶちやがったな?」
「は、はぁっ!? そ、それはそいつが無理やり割り込んできたからじゃん!?」
「んなことはどうでもいいんだよ……問題は」
あ、これはマズい。
そう思ったのも束の間。
満天は先輩女子の前で拳をゴキリと鳴らすと、
「てめぇがどんな形であれ、アタシの『ツレ』に手を挙げたってことだよ!!」
満天の金の髪が逆立ち、怒れる金獅子と化す。
その姿は獰猛の一言。先ほどまで先輩として満天に高圧的な態度を取っていた彼女たちの顔が、見る間に青ざめていく。
「人のもんに手ぇ出したらどうなるか……徹底的に教えてやるよこのクソア○ズレ共!!」
階段を通り越して響き渡る強烈な怒号。
太一の外面だけの恐怖とは違う、まったく別種の生命に危機を覚えるレベルの威圧感。
数がどうこういう話でもなく、満天の本気の怒りを前にして先輩たちはリーダー格の女子を残してその場から逃走。
「ちょっ、ちょっと! 置いてかないでよ~!!」
そして、そのリーダー女子も、満天の剣幕の前に尻尾を巻いた。
「てめ、逃げんなこら!! ぜってぇ潰す!!」
「あ、満天さん! 待ってください! ダメですから! 潰すのは絶対にダメですから!」
後輩の顔を潰しにきたはずの先輩女子たちは、逆に満天から逃げまどい、逆に徹底的にその面子を潰される結果となってしまった。
「待てこら~!! 喧嘩売って来たんなら最後までケジメつけてけや~!!」
「ひぃぃぃぃぃっ!!」
3学年の教室がある廊下。上級生ばかりのそこを、満天は物怖じどころか人の目さえ一切気にせず獲物を追う。
部活で鍛えた相手にも引けを取らない……どころか追いつきそうな脚力に、先輩たちは残念な悲鳴を上げて逃げまどう。
これこそが不破満天。たとえ相手が上級生だろうが教師だろうがお構いなし。自分と自分の身内の敵は、地の果てでも追い詰めて排除する(物理)。
「不破さん、落ち着いてください!」
「ああっ!?」
満天を呼び止めた太一に彼女が綺麗なUターン。鬼のような形相で、今度は太一の下に駆け寄って、
「名前で呼べって言っただろうがコラ~!!」
「んぎゃあああああああああっ!」
太一は満天に、顔を掴まれアイアンクロー。メリメリと音を立てる頭蓋骨。
「てかさっき、アタシのこと“友達”とか抜かしてたよな!?」
先程の場面を思い出し、ゴリラ握力に磨きがかかる。
満天は口を尖らせ頬を染め、
「あんたはアタシの恋人になるんだろうがよ!!」
などと、満天はひどくこっ恥ずかしいことを、全然関係のない学年の廊下で、想い人の頭蓋に指をめり込ませながら、声高に叫ぶのであった。
(怒`・ω・´)ムキッ
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