こくら物語 Ⅲ(物語シリーズ③)新装版 🅽🅴🆆!

✿モンテ✣クリスト✿

第1話 明彦の職業は理解できんわ!1

 私は種子島空港から直美に電話した。


「もしもし。直美?明彦だけど」

「明彦!今、どこなの?」

「今、種子島空港にいる。これからそっちに移動する。鹿児島中央駅から17:54発みずほ610号で、小倉駅19:30だ」

「む、迎えに行く!ミキちゃんももちろん連れていきます!」

「あ、それで泊まる所なんだが・・・」

「せ、狭いけど私のマンション、ダメ?ダメ?三人水入らずよ!」

「ああ、そうしよう」

「新幹線の席は?」

「ええっと、6号車の15Bを会社が予約してくれた」

「入場券を買ってホームまでお迎えに参ります!」


 直美とミキちゃんがホームで待っていた。二人に抱きつかれた。


 タクシーで直美のマンションまで行く。二人とも狭いのに後部席で私を真ん中にはさんでベタベタ触られた。どうしたんだ?三週間いない間にたまっちゃったんだろうか?


 直美のマンションに着いて、酒とか出された。自分の家に帰ってきたような気がした。それで、私のいない間に二人に何があったのか聞こうとしたら、直美が私の名刺を取り出して見せて、

「明彦、まずね、ミキちゃんとず~~っと不思議に思っていたんだけど、明彦がなぜ、国連機関のUNDPでJAXAの職員なのかって、お聞きしたいのよ。私たちの出資家でパートナーでしょ?わからないことがないようにしたいのよ」

「もっともな話だ。前はバタバタしていて、大阪では説明しなかったね。それは長くなるけど・・・」


―――――――――――――――――――――――――――――――――


 今回のマレーシアへの出張の目的は、後で述べる私のアイデアにひと口、数百億円ぐらいだして乗らないか?というのをマレー政府に打診するためだ。いや、決して、詐欺話じゃない。政府は前向きに検討すると言ってくれた。


 会社にいろいろと報告することが貯まっていた。それで、種子島宇宙センターに行かなければならない。だが、マレーシアから種子島というのは意外に面倒な経路なのだ。


 私はANAのスター・アライアンスとJALのワンワールドのどちらのマイレージも使っているが、どちらかというと、昔からANAの方に好意を持っている。私の名誉のために言っておくが、CAの容貌とか平均的に若いから、では断固としてない。JALのCAに失礼である。サービスの質が私に合っているだけだ。まあ、それもJALには失礼な話だが。


 それで、マレーシアから種子島に行く場合、クアラルンプール空港からNH816を使う。08:00発、15:40成田行。種子島まで行くのに九州を飛び越えて、遠く東の成田に行かなければならない。さらに、国内便で成田から羽田に移動。国内便のNH629で、羽田発18:45、鹿児島空港着20:45だ。


 鹿児島空港に夜九時近くに着いたところで、種子島行きの航空便もフェリーももうない。仕方なく、 空港近くのホテルに泊まる。翌朝、鹿児島空港08:10発JAL3761便で種子島へ。種子島空港着は08:50。ここまでで26時間(KLとの時差が1時間ある)かかる。


 ここからさらに種子島宇宙センターまでJAXAの車で南に33キロ、1時間弱かかる。なんやかんやで一日半だ。スリランカのコロンボからだと二日かかる。やっとJAXA施設部の射場施設課オフィスにたどりつくのだ。


 JAXAと言ってもロケット本体の研究・運営だけじゃない。施設のメンテナンスや整備計画をする部署も必要だ。施設部は地上施設の整備・維持・運用を通じてJAXAの研究開発を支えるとともに、宇宙技術の地上転用等について技術開発も行っている部署だ。


 といいつつ、私はスリランカとかマレーシアをウロチョロしていて、UNDP(国連開発計画)にも席をおいて、あいつは何をやっているんだ?と部の連中に言われている。実にご尤もな評価だ。たまに、国連開発計画本部のニューヨークにも出張するので、周囲の目は私に厳しい。


 私がJAXAに入った時、なぜロケット発射場は種子島にあるのか?が疑問だった。


 まず、ロケット発射場は高緯度地よりも低緯度地にある方が利点が大きい。低緯度ほど地球の自転速度が速いため、東方向への打ち上げの効率が向上する。地球の自転速度をロケットの離脱に活用できるのだ。その結果、燃料の節約ができ、同じ燃料でより重いペイロード(人工衛星など)を運べる。


 静止軌道への打ち上げがしやすいのも利点のひとつ。静止軌道は赤道上空約35,786 kmにある軌道だ。赤道に近い場所がいいに決まっている。


 じゃあ、沖縄本島のほうが種子島よりも南にあるから有利だ、とはならない。沖縄本島は北緯約26°、種子島は約30°だが、この緯度差による影響は比較的小さく、ペイロード(搭載可能な重量)の増加は1~2%程度だ。


 さらに、種子島は東側に広く海が広がるため、安全な軌道を確保しやすいが、沖縄本島は、宮古島や石垣島、台湾などが進路上にあるため、安全確保が困難だ。それに、種子島は周囲に人口密集地が少なく、万が一の事故時のリスクが低いのだ。


  気象条件も理由のひとつ。沖縄本島は台風が多く、年間を通じて打ち上げの影響を受けやすいが、種子島も台風の影響を受けるが、沖縄よりは頻度が低く、年間を通して比較的安定した運用が可能なのだ。

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