第30話 OEM EV導入 2024年10月10日(木)15時
OEM EVの詳細な契約については、ロイヤリティやワランティの他にも、開発をサポートする目的で北首汽車から北京浅田汽車に派遣された中国人の出向者の人件費負担額など、浅田自動車と北首汽車は、事ある毎にもめた。
しかし、OEM EVが欲しくてたまらない浅田自動車が、全てを妥協する形で契約が締結され、何とか中国市場にOEM EVが導入された。
そして、OEM EVが中国市場に導入されてから一カ月後に、欧州とアセアンへの輸出も開始された。
OEM EVは、浅田自動車のデザインが施されたとは言え、中国では、ベース車である北首汽車の新型EVが、OEM EVより3万元(約55万円)も安く販売されていたので、販売台数は計画を大きく下回った。
しかし、欧州及びアセアンでは、北首汽車の新型EVは販売されていなかったので、OEM EVの販売台数は計画を少し上回り導入は成功した。
そして、欧州とアセアンで必要なCAFEクレジットを稼ぐ事も出来た。
藤堂は、この結果をある程度予測していた。
以前に北京浅田汽車の販売担当副総裁の今川から言われた事があった。
「藤堂さん、OEM EVは、中国ではC688よりは売れると思いますが、計画の年間6万台を売るのは難しいと思いますよ。なにせ兄弟車の北首汽車の新型EVは3万元も安いので、多くのお客様はそちらを選んでしまいます。中国消費者は、もうコストパフォーマンスで商品を選ぶ様になっており、日本ブランドのアドバンテージは無くなっています」
一方、浅田自動車では、大市場の欧州とアセアンでの導入が成功し、CAFEクレジットも稼げたので、山本副社長は鼻高々であった。
しかし、藤堂は、欧州とアセアンでのOEM EVの成功は、技術者として手放しでは喜べなかった。
浅田自動車は、自社の技術で、EVを開発する事が出来ない、本当にこのままで将来大丈夫かと不安に思った。
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