第16話 婷婷のアパート 2020年3月6日(金)22時
中国専用EVの開発は、コストが膨れたまま進んだ。
藤堂は、山本副社長からコストについて追及を受けた際の言訳を考える日々が続いた。
藤堂はストレスを感じずにはいられなかった。このままでは、精神的にやられると思い、KTVの京東に一人で行く回数が増えた。週に最低三回は行く様になった。
藤堂は、京東に行くたびに、婷婷(ティンティン)を指名した。
ある晩、藤堂がいつもの様に婷婷(ティンティン)を指名したところ、彼女は私服で藤堂の前に現れた。
偽のグッチのロゴが入った白いTシャツとジーンズ生地の短パンという服装であった。いつもの仕事用ワンピースよりも、はつらつとしていて可愛らしく見えた。
藤堂は少し驚いて、婷婷(ティンティン)に理由を聞くと、友達と食事をして、少し遅刻して出勤したところ、藤堂が既に部屋で待っていると聞いて、着替えずに飛んで来たとの事であった。
店の規則では、女の子は出勤したら必ず仕事用ワンピースに着替える事になっている様だが、婷婷(ティンティン)は最近、藤堂の指名が多く、ママからも特別扱いされている様であった。
藤堂と婷婷(ティンティン)は、いつもの様にサイコロゲームをしたり、歌を歌ったりして楽しい時間を過ごしていた。
藤堂は、いつもとは違う雰囲気の私服の婷婷(ティンティン)を見ていると、ムラムラした感情がこみ上げて来た。
衝動的にキスをした。婷婷(ティンティン)が拒まなかったので、ディープキスに切り替え、そのまま婷婷(ティンティン)の胸に手をあてた。Tシャツの上から胸に手をあてても拒まなかったので、Tシャツの裾から手を差し入れてブラジャーの上から胸を触った。痩せている割にはそれなりにボリューム感のある胸であった。30秒ほど胸を触りながらキスしていても全く拒む様子がなかったので、今度は、短パンの股間の隙間から中指を差し入れてみた。短パンなので意外にも簡単に下着の内側に中指が入り、婷婷の大切なところに指がとどいた。そこが濡れているのを確認できた瞬間、婷婷(ティンティン)はキスをやめ、藤堂の手をやさしく払った。
「藤堂さん、これ以上はダメですよ」
藤堂も照れながら笑ってごまかすしかなかった。
「いいじゃない、婷婷(ティンティン)と僕は、週に三回も会っている彼女と彼氏の様なものなんだから」
「お店でHな事するとママに怒られちゃうの。ママも警察にばれたらお店が潰ぶれるって、いつも言っています」
「そうか、わかったよ、仕方ないね」
「藤堂さん、もし私とHがしたいなら、一晩1200元でどうですか?」
藤堂は、婷婷(ティンティン)が笑いながら言っているが、冗談ではなく本気でオファーしている事を感じとった。
「えっ?いいの?」藤堂は答えた。
「じゃあ、今から藤堂さんの家に行きましょうよ」
しかし、藤堂は安との一件もあり、警戒心の塊になっていた。ミレニアムアパートに女の子を連れ込んでいるところを浅田自動車の同僚に見られでもしたら、EV開発もうまく行ってないのに、藤堂は何をやっているんだという話になりかねない。こういう話はすぐに本社にも伝わる可能性がある。
「婷婷、僕のアパートは会社の同僚が沢山いるので、ちょっと危ないんだ。だから、君の家に行こう。君がどんなところに住んでいるかも見てみたい」
婷婷(ティンティン)は少し考えて、
「藤堂さん、私はいいですけど、私の家は少し遠いですよ」
「遠くてもいいよ。タクシーで行けばいいでしょ」
という話の流れで、藤堂と婷婷(ティンティン)は、婷婷のアパートに行く事になった。
婷婷(ティンティン)は店を出る時に、入口付近に居たママに何かを話していた。 ママは藤堂の方を見てやさしくほほ笑んだ。藤堂は、婷婷(ティンティン)がママに、藤堂と一緒に食事に行くとでも言ったのかもしれないと推察した。
二人が店を出ると白いチェリーブランドの国産セダンが待っていた。婷婷(ティンティン)によるとこの運転手に毎日送り迎えをしてもらっている様で、片道100元支払うとの事であった。
どう見ても滴滴(ディディ・中国の配車サービス会社)や違法白タクではない。
藤堂は、もしかしたら婷婷(ティンティン)の彼氏なのではないかと疑った。
クルマは、建国路から東に向かい京通快速路に入り東四環、東五環と過ぎ、双橋という交差点を右に曲がったところで止まった。遠かった。そこは完全に農村であった。
その一角に畑と並んで四階建てのアパートが立ち並んでいた。
藤堂は、クルマを降りた瞬間に、帰路が心配になった。タクシーは一台も通らない様な田舎である。
藤堂は婷婷(ティンティン)に、帰りはどの様に帰えれば良いのかを聞いた。すると、婷婷(ティンティン)は、帰りもさっきのお兄さんが送ってくれるから大丈夫だと言った。藤堂は、何かうさんくささを感じずにはいられなかった。
婷婷(ティンティン)の部屋は、四階建てアパートの一階であった。ドアを開け中に入ると、グレーのタイル調のビニール床貼りのリビングがあった。
明かりも薄暗く、建物も古いので、不気味な感じであった。
リビングの左右にドアがあった。婷婷(ティンティン)は、その一方のドアを開け藤堂を招き入れた。
藤堂は、婷婷(ティンティン)に、ここには他の人も住んでいるのかを尋ねた。
婷婷(ティンティン)は、隣に住んでいる人はいるけど、ほとんど居ないので、気にしないで大丈夫だと言った。
婷婷(ティンティン)の部屋は、六畳ぐらいの部屋で、タイル調ビニール貼りの床に、少し大きめのベッドと小さな鏡台があった。鏡台の上は化粧品でいっぱいだった。床には、食べかけのお菓子や衣服が散乱しており、全く清潔さを感じなかった。
しかし、藤堂は、北京のKTVの女の子の生活実態を知る事が出来たので、好奇心が満たされた様な満足感があった。
藤堂がベットに座ると、婷婷(ティンティン)は藤堂に「シャワーを浴びて来て」と言い、藤堂にピンク色のタオルを手渡した。
藤堂が浴室はどこかと尋ねるとリビングの奥との事だった。
藤堂は、薄暗いリビングに出て浴室に向かった。
浴室は、シャワースペースのすぐ横に洋式便器があるスタイルだった。シャワーを浴びると便器が水浸しになるパターンである。
浴室には脱いだ服を置く場所が無かったので、リビングで裸になり、リビングの隅にあったグレーの布製ソファの上に服と下着を置いた。
浴室のシャワーは、お湯は出たが水圧が低かった。
藤堂は、シャワーの後、薄暗いリビングで、ピンクのタオルで身体を拭き、素早く服を着た。
そして、婷婷(ティンティン)の部屋に帰ろうとした時、反対側の部屋のドアが一瞬開き、その住人と目があった。小柄な五十歳ぐらいの男性であった。その男性は藤堂と目が合うと、すぐにドアを閉めた。
藤堂はびっくりして婷婷(ティンティン)の部屋に戻ると、すぐに婷婷(ティンティン)に「隣に男の人が住んでるの?」と聞いた。
婷婷は、「知らない人」と答えるだけだった。そう答える婷婷(ティンティン)の姿を見て藤堂は更に驚いた。その時、婷婷(ティンティン)は、既に服を脱ぎ、上下白の下着姿であった。
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