第5話 「特別任務開始」

【夕方】


空が夕焼けに染まり始めたころ。

五番隊の一部精鋭が、周辺警戒と虚討伐のため、流魂街の外縁へと出発した。


選抜されたのは、

勇人・空斗・春陽・紫音・昂大の五人。


普段なら班を分ける構成だが、今日はあえて“全員一緒”。

真子の「お前ら、仲直りの記念にまとめて派遣な!」という軽口に、

隊舎がどっと笑いに包まれたのは、つい数十分前のことだった。



警戒区域に到着してすぐ――

気配のない静寂を抜け、風が吹き抜けたその瞬間。

空気がざわりと揺れる。


空斗「来る。五体、三方向。虚、確認」


勇人「正面、俺と昂大で行く!春陽、後衛の支援!」


「了解」

昂大の一言は、まるで剣のように鋭く、

次の瞬間にはすでに前線に出ていた。


紫音「俺は左。右は任せたで、春陽」


春陽「あぁ。……任せとけ」


互いの背中を預けるように、反対方向へ駆けるふたり。


霊圧の干渉がぶつかる。

虚の咆哮が空を裂く。


だが、その中――

まるで“型”のように、ふたりの動きは噛み合っていた。



紫音の斬撃が翻り、

それに合わせて春陽の結界が空間を包む。


虚がすり抜けようとしたその一瞬に、

結界の外縁を小さく調整し、動線を潰す――

それを狙って、紫音の双小太刀が一閃。


春陽「今や――!」


紫音「おぉっ、任せた!!」


すれ違いざまに拳を合わせ、背中で笑い合うように、

何も言わなくても通じる連携。


誰かが「すげぇ……」と呟いたのは、

気づけば虚五体がすでに沈黙していたからだった。



任務完了の報告を終えて、帰還中の道すがら。


勇人「やっぱさ……今日の動き、完璧やったよな。びびったわ」


空斗「あれが“本気の連携”ってやつかな。……最初からやってれば、午前の訓練も楽だったのに」


「う……耳が痛いわ……」

紫音が苦笑しながら、後頭部をかく。


春陽「……でも、今日は良かった。よう、見えてたわ。お前の斬撃」


紫音「そっちこそや。お前の“包み方”、優しすぎて敵が戸惑うやろな。……ありがとう」


照れくさそうに顔を逸らすふたりを見て、

勇人はふっと笑う。


勇人「――やっぱ、お前らはお前らで、ちゃんと五番隊やな」


______________________________________


夕陽に照らされながら、ゆるやかに隊舎へ戻る帰り道。


春陽と紫音は、並んで話している。


春陽「俺、前は“話さんと伝わらん”て思ってた。でも今日、お前と戦ってて……なんか、言葉要らんなって思った」


紫音「ははっ、何やそれ。……俺も同じようなこと思ってた。やっぱ俺ら、似とるんかな」


ふたりの肩越しに、まるでドラマのエンディングのような空気が流れていた。


……その後ろ。


空斗&昂大


二人、黙って歩いていたが――

ふと視線を交わす。


空斗は一度ため息をついて、眉間を押さえるように小さく呟いた。


空斗(心の声)「……いや、俺ら今日、何しに来た?関係なくね?」


昂大もまた、表情を変えず、前を見据えたまま――

右手でさりげなくミサンガを触る。


昂大(心の声)「……斬ったけど、空気には一切関与してないしな……」


絶妙な“俺ら空気”感。

でも誰よりも冷静に、的確に、任務を終えたふたりだった。



勇人がちらっとその様子を後ろから見て、ふふっと笑った。


勇人「……お前ら、マジで信頼できるわ。しゃべらんでも分かるタイプ」


空斗「……無駄口が少ないだけや」


昂大「……別に。必要なときは斬る。それだけだよ」


三人の、言葉少なでもしっかり繋がった連携。

それもまた、五番隊の“芯”だった。


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