転生した平安姫君は街工場で熱愛中?!

和泉柚希

第1話 転生した姫君

「ここは……? 私は……? あれ?」


 瞑っていた目をぱっちりと開ける。そしてまばたきを数回する。出す言葉に違和感を覚える。自分の声も少し違っている。私は、目の前に今まで見たこともない形をした、大きい建物を目にしていた。


「この服は?」


 立って、砂埃を払う。自分の着ている服を見ると、どうやら着物ではない別のものだ。黒い服の上に黄色いものを着ている。そして、青色のものを履いている。生地も今まで見たことがないようなものだ。


「何してるの? うちの工場の目の前で」


 そんな私の戸惑った様子を見かねていたのだろう。同じく着物ではない変わった服を着ている男の人に声を掛けられる。その男の人は体格が良く、少し鋭い目つきをしている。けれど特に暴力を振るうわけではないことはその穏やかな口調から感じ取ることができた。


「ここは……? 今は?」

「今? 今は……今だろう」

「今は何年ですか?」


 私は自分の勘が当たっていると思った。だってこんな着るものは見たことがない。こんな建物も。鈍感でマイペースな私だってこんなことが自分の身に起きれば分かる。


「2025年。令和だよ」


(れ、い、わ?)

(20……25?)


 私はその数字に驚いていた。とにかく言っていることがよく分からない。とにかく分かる範囲で話を話そうとするが、うまく話すことができない。どうしようとまた戸惑っていると、


「何その子」

「いや、ここの前に座ってた。今はいつだって聞いてきてさ」

「え〜? なになに? どういうこと? なんか面白そう」


 男の人とおばさんが自分のことを話している。私は何とかして自分のことを話そうと分かりやすく伝えようと話を頭の中で整理し、考えていた。そして言葉にしようとした時だった。


「とりあえずお茶でもどうぞ」


 にこっとそのおばさんは、私に微笑んでその建物の中に入るように促した。思えばなぜか、私はここに来てから身体に泥もついていて、その様子を見たおばさんや男の人は只事ではないと思ったのかもしれない。


 気づけば私はその建物の中に入り、椅子に座ってお茶を飲んでいた。


「何しに来ていたの?」


 私は返す言葉が見つからず、


「……」と無言を貫いてしまった。心の中ではああいけない。何か言わないと。そう言えばさっきまで言おうとしていた言葉を整理していたのに。


「平安時代から、来ました」


 私は結局単刀直入にそう言ってしまった。こんなことを言っても信じてくれないだろうから、ずっと考えていたのに。


「へ、平安時代?!」

「そ、そうかあ……」


 男の人とおばさんは呆れる様な顔をして私の顔を見ていた。


(そりゃ、そうだよね)


 



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