第18話 新たな依頼

ある朝、いつものようにギルドで依頼掲示板を眺めていたカズマは、一枚の張り紙に目を留めた。そこには、「大型の魔物が交易路を襲撃しており、討伐求む」という文字が太々しく書かれていた。


「うわ、報酬高いな。こりゃ手応えありそうだ」


そう呟いたカズマの隣で、めぐみんがぴょこっと顔を出す。


「どうしたんですか、カズマ?なにか面白そうな依頼でも見つけたんですか?」


「面白いかどうかは別として、報酬はかなり魅力的だな。ほら、これ。大型魔物の討伐依頼らしい。最近、商隊が通るたびに襲われてるらしいぞ」


カズマが指差すと、めぐみんは目を輝かせた。


「それはちょうどいいですね。久しぶりに私の爆裂魔法が唸る時が来たようです!」


「いや、唸らせるのは勝手だけど、爆裂魔法って一発屋じゃん。戦闘の最中に倒れられても困るぞ。ちゃんと作戦立ててやるからな」


「わかってますよ、カズマ。私だって学習してるんですから」


そう言いつつも、めぐみんの目は期待に満ちていた。最近は軽口を叩く余裕すらないような日々が続いていたが、こうして新たな依頼にワクワクしている彼女を見ると、カズマも自然と口元が緩んだ。


***


数時間後、一行は準備を整え、魔物の出没地点に向けて出発した。


道中、いつもなら賑やかだった会話は少なめで、空気はどこか張り詰めていた。めぐみんも、静かに歩きながら時折地図に目をやっている。


「……なあ、最近、あんまり喋らなくなったな。何かあったのか?」


カズマが気になって尋ねると、めぐみんは少し驚いた顔をしたが、すぐに落ち着いた声で返した。


「そうですか?たぶん、少し疲れているだけですよ。最近ずっと忙しかったですから」


「まあ、そうだよな。毎日依頼こなして、宿に帰ったらすぐ寝て、起きたらまた出発。笑ってる暇もない」


「でも、私は今の生活も悪くないと思ってます。充実してるっていうんですかね?ただ……」


「ただ?」


「カズマとゆっくり話す時間が、最近あまり取れていないような気がして。少し、寂しいですよ」


その言葉に、カズマは一瞬返す言葉を失った。思い返してみれば、確かにここ最近の彼らは「仲間」ではあっても、心を通わせる時間は減っていたかもしれない。


「そうだな……少しでも時間できたら、またあの川辺でサンドイッチでも食うか。たまにはのんびりしようぜ」


「はい、それがいいと思います。カズマの作ったサンドイッチ、私は好きですから」


「お、おう……それ、褒めてんのか?」


「もちろんですよ。あの味、けっこう癖になります」


どこかぎこちないけれど、確かに二人の距離は少し近づいた。だが、それも束の間。彼らを待つのは、熾烈な戦いの始まりだった。

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