第5話 手と手、触れた距離

その翌日。今日は珍しく、アクアとダクネスが町の教会で何かの手伝いをしており、パーティーは自由行動だった。


「カズマカズマ! 今日はですね、特に爆裂魔法を撃つ予定はないのです!」


「え、どうした。熱でもあるのか?」


「違います! 今日はなんとなく、カズマと町をぶらぶらする日なんです!」


「急にどうしたよ、お前……まあ、ヒマだし付き合うか」


そうして二人は、町の市場や広場をのんびりと歩いて回った。

食べ歩きをしたり、アクセサリー屋を冷やかしたり――まるでデートみたいな雰囲気だった。


「カズマ、この髪飾り、私に似合いそうですか?」


「ん? あー、意外と似合うんじゃね? 赤と黒って感じで、お前らしい」


「ほ、本当ですか!? じゃあ……その、あとで買おうかなって」


「……へぇ」


カズマはちょっとだけ驚いた。

めぐみんがこういう“普通の女の子っぽい行動”をするのは、珍しい気がした。


夕方。ふたりは人通りの少ない道を歩いていた。

そのとき、段差に気づかず、めぐみんがバランスを崩した。


「わっ――」


「おっと!」


カズマはとっさに手を伸ばし、めぐみんの手をがっちりとつかんだ。


「だ、大丈夫か?」


「……は、はい。すみません、ちょっとぼーっとしてて…」


手は、まだつないだまま。


「……」


「……」


めぐみんは、カズマの手を見つめて、少しだけ指を握り返した。


「……このまま、少しだけ、こうしててもいいですか?」


「……ああ、別に」


ほんの数秒のことだったのに、その時間は妙に長く感じた。

そしてカズマは、胸の奥が少しざわつくのを感じていた。

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