第18話:すれ違う気持ち

翌日。

藤本悟は、朝からなんとなく落ち着かなかった。


(昨日、茜と手を繋いで帰った。あんなに嬉しかったのに……)


学校に着いても、茜の様子が少しだけ違って見えた。

笑顔はあるけど、どこかぎこちない。


昼休み、悟は思い切って話しかけた。


「茜、今日一緒に帰ろうか?」


「……ごめん、今日は用事あるんだ」


「あ、そっか。わかった」


悟は笑顔で答えたけど、胸の奥がチクリと痛んだ。


(……俺、なに期待してたんだろ)


下校時間。

校門の前で、茜がクラスの男子と楽しそうに話しているのが目に入った。


(別に、気にすることじゃない。茜だって友達いるし……)


そう思い込もうとしても、視線をそらすことしかできなかった。


夜、スマホを見ても、茜からのメッセージは来ていない。

自分から送ろうかと悩んで、結局何もできないまま時間だけが過ぎていった。


その頃、茜もまた、ベッドの上でスマホを握りしめていた。


(……悟くん、怒ってないかな)

(私が距離を置いちゃったみたいに見えたよね……)


本当は、悟と一緒に帰りたかった。

でも、あの“特別な日”のあと、どうしていいか分からなくなっていた。


「怖いな……」


ぽつりと呟いた茜の声は、夜の静寂に溶けていった。


ふたりの心は、たった一歩ずれただけ。

それなのに、その距離はとても遠く感じた。


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