お題【ヒーローもの】-4

「正しく、愉快なショーだったよ。敵とも知らずに仲間だと信じて疑わないお前達は」


 五分前まで共に肩を並べていた筈の相手が、仲間だった頃には見たことの無い表情で言葉を吐き捨てる。


「…なぁ、嘘だろ? 何か事情が……」


 歩み寄り、対話しようとするヒーローの足元に、鉛玉が突き刺さる。訣別の狼煙を上げる銃口をヒーローの顔へ向け、仲間だったヴィランは呆れたように肩を竦めた。


「あぁ、事情が有ったさ。最初っから俺はお前の敵だった、って事情がな。お前の力、お前の切り札、お前の弱点……全部教えてくれて感謝するぜ? じゃあな。マヌケなヒーローさん」


 去っていくヴィランに、未だ迷うヒーローが出来る事は無く。彼が去った後に、戦いにならなかった事への安堵と疑問を抱くのみだった。


――――――――――


「…ケッ。勝てねぇでやんの。あーあ、終わりか」


 倒れ伏し空を見上げるヴィランと、片膝を付きながらも戦う意思を残すヒーロー。


 あれから、再び邂逅した二人は激しい戦いを繰り広げ、遂に勝敗は決した。ヴィランの講じた策に苦しみながらも、ヒーローは全てに打ち克ち、勝利したのだ。


「…何してんだよ。トドメ刺せよ。それとも、まだ甘い事言おうってのか? お前の欠点だもんなぁそれ」


 最早動かない身体を地に放り投げ、どうせ最期とばかりに話すヴィランの手に、ヒーローは手を重ねる。


「…裏切るにしても、なんで不意打ち…それか、明かした時に攻撃をしなかったか、ずっと考えてたんだよ」


 ヒーローの言葉に、ヴィランは露骨に嫌な顔をする。


「…勝てると踏んでただけだ。今思えば油断もいいところだな全く」


 白々しい言葉に、ヒーローは苦笑する。


「…そんな間抜けする奴じゃねーだろお前。…結局、考えてもわかんなかったけどさ、これで貸し借り無しって事で。……次戦う事は、無いと」


 ぱし、と手の平を叩き、ヒーローは去っていく。その背を見送りながら、ヴィランは呟いた。


「…言えるわけねーよな。……本当は楽しかった、なんてよ」


――――――――――


【蛇足:正義の味方ごっこ】

「…おい、何してんだよ!」


 ヒーローと、その後ろでヒーローに護られている女性を狙った攻撃が炸裂した。しかしヒーロー達に被害は無く、見ればヒーローを庇うように、一人のヴィランが立っていたのだ。


「…身体が勝手に動いたんだよ。へ、どのみち一回裏切ってんだ。二回目の裏切りだってしていいだろ」


 そう言って、ヴィランは笑う。


「…知ってんだよ。お前、誰か護ろうとすると自分の守りが無くなる癖に、優先して他人護ろうとするの。弱点だから気を付けとけって言ってたろうが」


 そして、ごぼりと血の塊を吐いてヴィランは倒れた。駆け寄ろうとするヒーローだが、しかし追撃がそれを許さない。


(…なぁ。俺も……ヒーローってやつに。本当の意味でお前達の仲間に、なれたかな?)


 薄れ行く意識の中で零れた本音は、誰に聴かれるでもなく消えていった。

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