お題 『いつまでも少女を穿つ矢尻』

「貴女は、いつまで戦い続けるつもりだ?」


 治療を受けている最中に、医師から問われる。その言葉の意図を考えているうちに、医師は言葉を重ねる。


「貴女の戦い方は、寿命を磨り減らすようなものだ。…経緯は聞いているが、このまま戦い続けていれば早晩貴女の命は尽きるだろう。医師として、これ以上貴女に戦わせる事は出来ない」


 真摯に私を見詰める医師。私のようなヒトモドキを、他と変わらず一人の人間として扱ってくれる人。


「…ありがとう。でもね…戦えない私は、必要とされない。そう在れと望まれた私には、戦いしか無いの。だから……お願い。私がここに居る意味を。ここに在る価値を、奪わないで」


 この胸を焦がす情動は、戦えと私を突き動かす声は、私を穿ち貫き続けている矢尻だ。抜ける事の無い想い、願いを、呪いと呼ぶ者も居るだろう。けれど、私にとってはこれこそが祝福であり、存在意義だ。それを無くしてしまう事は、たとえ大切な人の言葉でも、耐えきれなかった。


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 治療が終わり、彼女は一言礼を言って去っていく。何か言葉を投げ掛けようにも、先程言われた切なる願いが、私を射抜いて離さない。


「…私が君の生きる意味を示せたら。或いは、私が君の生きる意味となれたのなら、どんなに良かった事だろうか……」


 彼女の姿が見えなくなった所で、漸く絞り出した言葉。彼女にとっての私は、護るべき一人でしかないとしても。私にとって彼女は、何物にも代え難い存在なのだった。

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