TS少女はスキル『バーサーカー』でダンジョンを無双する~配信が過激すぎてドン引きされてます~

アンリミテッド

プロローグ

 ダンジョン。それはモンスターが蔓延る危険な迷宮。普通ならこんな迷宮に入らないと思うが、危険に見合った報酬があったりする。モンスターの魔石はお金になるし、素材は道具として生まれ変わる。

 ダンジョンは一攫千金が狙える場所なんだ。私は興味ないけど、でもお金は欲しいなぁ。

 そんなダンジョンに挑む者達を人々は探索者と呼んでいる。探索者を支える組織、探索者協会もある。

 とにかく、今はダンジョンを中心に世界が回っていると言っても過言ではない。


 この世界に、私はとして生を受けた。前世のこともしっかり覚えている。私の前世はであった。何処にでもいる、普通の人間だった。

 それが生まれ変わったら女性になっていたから、最初は驚いた。けど案外すぐに慣れていった。


 自由に動き回れる頃にダンジョンのことを知った。小学生になると、ダンジョン配信を見るようになった。配信者が輝いて見えたんだ。私もダンジョン配信者になりたいと決意した。


 そしてダンジョン配信者になった。今をときめく可愛い系の配信者、になりたかったなぁ……




 私は今、ダンジョンに潜って生配信をしていた。頭上には私を写す為のドローンがある。金髪のロングに赤い瞳。黒いゴスロリ衣装を纏った自分自身が映し出されているだろう。

 外見だけで判断するなら可愛い系な感じだろうか。しかし、私は違う。


 丁度モンスターが現れた。巨体が特徴なオークである。オークは獲物を定めて笑みを浮かべた。

 スキル『バーサーカー』で闘争本能が刺激される。私の口角も上がっているだろう。手に持っている大剣を構える。


〈相変わらず悪い笑みを浮かべてらぁ〉

〈また始まるのか〉

〈アイカの殺戮ショー〉

〈初見です、殺戮ショーってどういうことですか?〉

〈覚悟して見た方が良いぞ。この娘は一味違う〉


 オークが拳を振り降ろす。私は攻撃を避けて、大剣で腕を切り落とした。痛みで叫んだオークは本当に隙だらけで、次に両足を切り裂いた。体勢が崩れたオークの首を最後に切り落とした。返り血を浴びたくないから前蹴りした。


〈オロロロロロ〉

〈今回はやけに抑えていたな〉

〈初見さん、無理しないでくれよ〉

〈まるで前の俺達みたいだ〉

〈女の子が浮かべて良い笑みじゃない〉


「しょうがないでしょ」


 ドローンに映し出されるコメントを返しながら、オークが消滅して代わりにある魔石を回収する。回収した魔石は『ダンジョンウォッチ』のストレージに仕舞い込んだ。


〈コツコツ回収するね〉

〈魔石はお金になるからな〉

〈それでも、コツコツ回収するのは珍しい方でしょ〉

〈言えてる〉


「お金は欲しいからね」


 貧乏ってほどじゃないけど、現在は一人暮らしの最中である。お金は確実に欲しいのだ。生活を豊かにする為や好きな服や物を買う為に。


「それじゃあ、進みましょうか」


〈次はどんなモンスターと会うのだろうか〉

〈会ったらどんな末路を辿るのだろうか〉

〈碌な末路にはならないことは分かる、分かるぞ〉

〈笑う女性は好きだけど、アイカの場合は怖い〉

〈同感です〉


「愉快ね、私は好きよ」


 いつもこんな感じである。同接数は一桁なものの、コメント的に見てくれているから嬉しい。


 最後に言うべきことがある。

 私が可愛い系やミステリアスではない理由。それは私のスキル、バーサーカーの所為である。バーサーカーは闘争本能をギリギリまで上げる。だから戦闘の時は容赦なく、相手を狩る。だから可愛くは出来ない、どうしても過激になってしまう。

 それだけが残念だと思うのだった。

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